安藤周人

横浜BC相手に2試合続けて2桁得点、得意のオフェンスでチームに流れをもたらす

アルバルク東京は10月12日、13日とアウェーで横浜ビー・コルセアーズと対戦。2試合とも第4クォーター終盤まで接戦となったが、最後に地力の違いを見せ12日は89-80、13日は79-68と競り勝った。これでA東京は開幕4連勝と順調なスタートを切っている。

今シーズンのA東京は、昨シーズンの主力選手たちが揃って残留。デイニアス・アドマイティスヘッドコーチ体制3年目となり、持ち味の堅守と質の高いハーフコートバスケットボールにより磨きをかけている。継続路線によって安定感がより増している今シーズンのA東京だが、その中で昨シーズンからの大きな変化を目指しているのが安藤周人だ。

リーグ有数のシューターである安藤だが、昨シーズンは特に終盤に入ってから持ち味の3ポイントシュートが不発に終わる場面が目立つなど、消化不良に終わった。その反省もあり、プレシーズンで取材した際には、「去年に関してはシーズンを通して、何をしたらいいのかなという感じでした。CSだけでなく、シーズン全体で納得がいくものではなかったです。今シーズンはしっかりと割り切ってやりたいです」と語り、「やっぱりシュート第一で攻める気持ちを強く持ちたい」と、がむしゃらに得点を狙い行きたいと明かしていた。

そして迎えた越谷アルファーズとの開幕節では、1試合目こそフィールドゴールはわずか3本の試投で2得点に終わったが、2試合目には9得点を記録。そして、横浜BC戦は10得点、11得点と2日続けて2桁得点をマークし、オフェンスに勢いをもたらしていた。

12日の試合後、安藤はこのように振り返った。「開幕戦は、ホーム開幕ということもあって気持ちが昂り、なかなか自分のやるべきことを整理できずに、このままでいいのかという部分がありました。去年に比べて出場時間が限られている中、どうやって自分の存在感を出そうか越谷戦が終わってからも考えました。自分は点数を取って存在感を出すのが必要で、今日は合格点というところです」

ただ、もっと攻め気を出してシュートを狙っていけると続ける。「シュートを打てるチャンスはもっとありましたし、もっとボールを要求してもよかったかなと。始まったばかりなので、そこはチームの感じを見ながらやっていきたいです」

昨シーズンの安藤は、レギュラーシーズン57試合の内、25試合に先発出場と起用法が安定していなかった。今シーズンはここまで4試合すべてでベンチスタートだが、それは彼自身が望んだものだ。

「今年はコーチにも、スタートではなくシックスマンで出たいとお願いしました。去年はスタートだったり、シックスマンだったりで準備の仕方も変わるのでどちらかに固定した方がいい。そして小酒部(泰暉)のバックアップとして攻撃面でチームを支えるべきかなと。自分がどうやってチームの助けになるかを日々、学んでいきたいです」

安藤周人

「自分のエゴよりチーム全体を見ないといけないです」

選手にとってより多くのプレータイムを得たいと思うのは普通のことだ。そして、ベンチスタートになれば必然的にプレータイムは減っていく傾向にある。実際、昨シーズンまで安藤は1試合平均20分以上コートに立っていたが、ここまで20分以上の出場はない。

安藤が「コーチにシックスマンとして出たいと言うことが、ベストな判断なのかすごく悩みましたし、めちゃくちゃ葛藤しました」と語るように、それは簡単な決断ではなかった。だが、A東京のアイデンティで最も優先すべきはディフェンスであるからこそ、自分は繋ぎの役割を担うべきとの結論に至った。そこには昨年の琉球ゴールデンキングスとのチャンピオンシップ・クォーターファイナル初戦のダブルオーバータイム終盤に、2点リードで3ポイントシュートだけは打たせてはいけない場面でマッチアップした岸本隆一に、決勝のロングスリーを決められてしまった後悔も影響している。

安藤は、このようにこの大きな決断に至った背景を明かしてくれた。「去年、CSで琉球に負けた時、最後の3ポイントを決められたのが自分でした。僕たちはディフェンスファーストで、守備は小酒部の方が間違いなく上手です。試合の終盤、レオ(レオナルド・メインデル)、ライアン(ロシター)、(テーブス)海とオフェンスを引っ張っていける選手がいる中、自分が入ることでディフェンスの強度が1つガクンと下がってしまう可能性がある。終盤は小酒部に任せたほうがいいのかなと。その考えをシーズンが始まる前にアシスタントコーチからヘッドコーチに伝えてもらって、自分はシックスマンとして途中から良い流れを作っていきたいとお願いしました」

これまでの歴史が示すように、安藤はBリーグ屈指の実力者だ。「シュート第一」という一見すると個人のエゴを強く押し出すような目標を掲げる一方、今シーズンの彼はこれまで以上のチームへの献身性を持ってコートに立っている。

「チームとして何が必要なのか。去年のチームで何がダメだったのかを考えると、自分のエゴよりチーム全体を見ないといけないです。まだ、モヤモヤしている部分はありますし、シックスマンになって(これまでのように)1試合20分以上出られるわけでもないです。出場時間が限られている中でどうしたらいいのか葛藤しているところはあります。それでも、自分が何かしらできることはたくさんあると思うので、新しい試みを楽しみながらやりたいです」

実際、この週末の安藤は、限られた出番の中でも大きなインパクトを残した。シックスマンとして固定されることで、これまでに比べてプレータイムが減るかもしれない。だが、それは彼のパフォーマンスが低下したからではなく、中心選手としての優勝への強い覚悟、チームへの高い忠誠心によるものであることを忘れてはいけない。