文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

両親の前でスーパープレーを連発、敵地にどよめき

『渋谷ダービー』第1戦は、第1クォーターに27-3と圧倒したアルバルク東京が終始リードを保ち完勝した。

A東京は菊地祥平が右ハムストリング筋損傷によって出場できないというアクシデントに見舞われたが、頼もしい男が帰って来てもいた。3月6日の栃木ブレックス戦で左手首を捻挫し、前節の大阪エヴェッサ戦を欠場していたディアンテ・ギャレットである。

復帰まで2週間前後の見込みで、このサンロッカーズ渋谷戦に間に合うか心配されたが、前日練習からチームに復帰し、蓋を開けてみればゲームハイとなる25得点を挙げる大暴れを見せた。

ケガをした手首については「8割くらい。日に日に良くなっている」と順調な回復ぶりをアピール。試合勘についても「良い流れで入れて、チグハグすることはなかった」と問題なし。実際、第1クォーターに8得点3アシストの大活躍で流れを呼び込み、試合の趨勢を決めてしまう抜群のパフォーマンスを見せた。

バスケットボールにおいてシュートの成否にかかわらず動きだけで人々を魅了できる選手はなかなかいない。だが『元NBAプレーヤー』の肩書きは伊達ではなく、ギャレットはそれができる稀有な選手の一人だ。

昨日の試合でも独特なリズムから生まれるドリブルワークや軽々と決めるレイアップ、ステップバックからの3ポイントシュートに会場は何度もどよめいた。極めつけはゴールを背にした状態で、ゴール下に陣取るトレント・プレイステッドのシュートをアシストした、ノールックのバックビハインドパスだ。敵地ではあるがSR渋谷のブースターからも「おおっ!」と歓声が上がるほど。

いつも以上に観客を魅了するプレーが多かった印象を受けたが、「アメリカから両親が来ているので、親の前で良いプレーを見せたかったんだ」と、ケガ明けながらフル回転のパフォーマンスの理由を明かした。「先週も来ていたんだけど残念ながら(ケガで)試合に出れなくて、今日明日しか見せることができないから、この結果で良かったよ」

『チームのため』の先に『魅せるプレー』が存在する

会場となった青山学院記念館は座席が増設され、過去最多となる4377人が来場した。ギャレットはたくさんの観客が力になったと話す。「点差が離れた試合だったけどお客さんと一体感を感じたゲームだったよ。アウェーだけど、たくさんの観客の前でやれて自分たちにもエネルギーをもらえたね」

相手チームのファンからも感嘆の声を上げさせるギャレットにとっては、敵地も苦にはならない。「特にどちらがどうということはない。だけどアウェーのほうが好きな場面もあるかな。全員が敵の状況でブーイングされたら逆にエネルギーになる。『やってやろう』って気にはなるね」と『敵役』も演じることにも異存はない。

そういう気持ちがあったのか、すでに大差が付いた第4クォーターでダメ押しと言わんばかりに13得点を奪っている。だが遠距離3ポイントシュートやダブルクラッチなどの魅せるプレーは、会場を埋めたSR渋谷のファンにとっても喜ばしい妙技だったはず。ホームとアウェーにかかわらず、チケットを買って会場に足を運んだ観客に『特別な体験』をして帰ってもらうことは、プロフェッショナルとしての務めだ。

ただ、ギャレットにとって『魅せるプレー』のすべては『チームのため』の延長線上にある。「やるべきことをやった結果があのバックビハインドパスかもしれない。何があってもチームのためにプレーしているんだ。チームの勝利のためにしっかりプレーする。そこで自分の長所がエンターテインメント性であれば、それもいいことなんじゃないかな」

Bリーグの使命の一つである『エンターテイメント性の追求』の実現にギャレットが大きく寄与しているのは間違いない。昨日の試合でも彼の一挙手一投足に注目が集まり、期待に応えるプレーを連発した。

Bリーグが開幕してまもなく半年となる。あの『歴史的開幕戦』以降、ギャレットのプレーに魅せられた人は何万人といるだろう。まだBリーグを見たことがない人がいれば、まずはギャレットのプレーを見に来てみてはいかがだろうか。