キング開

あと一歩及ばず敗戦も15得点「今日は自分のアグレッシブさがすごく出たと思います」

10月12日、横浜ビー・コルセアーズがホーム開幕戦でアルバルク東京と対戦。チケット完売で大きな盛り上がりの中、リーグ屈指の堅守を誇る相手に自分たちの得意とするテンポの速いオフェンスで得点を重ねたが、ここ一番の遂行力で差が出て80-89で敗れてしまった。

試合の立ち上がり、横浜BCはA東京の強度の高いプレーに後手に回ってしまう。攻守でA東京のやりたいことを簡単に許し、開始5分で8-16と出遅れる。その後、持ち味のトランジションオフェンスを展開するも、守備を立て直すことができず第1クォーターを23-29で終える。

第2クォーターに入ると一転、横浜BCはA東京のフィジカルなプレーに対応することで盛り返し、前半終了時点で1点ビハインドまで迫った。しかし、第3クォーターの立ち上がり、横浜BCはズレを作ってシュートを打つが決め切れず、逆にA東京は強みを生かしたゴール下へのアタックを続けることで、このクォーターにフリースローだけで9得点を記録。横浜BCは2桁のリードを許す劣勢に立たされた。

第4クォーターに入るとダミアン・イングリス、マイク・コッツアーの豊富な運動量と機動力を備えた両ビッグマンが、トランジションに絡むことで食い下がる。しかし、試合巧者のA東京に主導権を握られ続けて及ばなかった。

試合後、横浜BCのラッシ・トゥオビヘッドコーチは、「本当にタフな試合でした」と語り、力負けだったと振り返る。「分かっていましたが、アルバルクさんは堅実でフィジカルの強いプレーをしてきました。自分たちもやりたいプレーができた時間帯はありましたけど、ほとんどの時間ではアルバルクさんがやりたいことをやっていたので負けてしまいました。そこに悔しさを感じています」

A東京といえば、1試合70失点以下が珍しくないリーグ屈指の堅守を誇る。その相手に対し、横浜BCは3ポイントシュートが21本中3本と完全に沈黙した中で80得点を奪った。これを考慮すればオフェンスは及第点だったのではないか。こちらの問いに指揮官は、長距離砲が不発だったことも必然だったと冷静に語る。「(A東京は)どんな試合でも素晴らしいスカウティングをしています。前半、私たちのアシストは6本しかなく、自分たちがやりたいバスケットの中でオープンスリーを打つ機会があまりなかったです」

前節、横浜BCは司令塔の森井健太が右ハムストリングの肉離れで、5週間から6週間の離脱となった。その結果、本職のポイントガードはキーファー・ラベナのみとなる中、森井の代役を担っているのがキング開だ。慣れない役割をこなしつつ、この試合でキングは25分39秒の出場でフィールドゴール10本中7本成功の15得点をマーク。特に第2クォーターでは8得点を挙げ、横浜BCの追い上げは彼の存在があってこそといえるインパクトを残した。

「ホーム開幕戦で相当、気合いが入っていました。(森井)健太さんがケガをしてしまったトラブルはありましたが、自分たちは全員で攻めるコレクティブバスケを目指しています。今日は自分がポイントガードもやりましたが、コーチから『全然心配することないよ。ポイントガードで自分の強みを出していけばいいから』と声をかけてもらっていました。今日は自分のアグレッシブさがすごく出たと思います」

キング開

「誰が打ってもいいスタイルで、毎試合ヒーローが変わるバスケをしています」

キングはプロで司令塔となるのは初めてだが、専修大学時代はボールプッシュを行い、ハンドラーとして攻撃の起点となっていた。この経験も踏まえ、ポイントガードとして磨いていくべき部分をこう語る。

「今のとにかく速くボールプッシュをしていくスタイルは、専修の時と似ています。そういった中、トランジションでは自分の強みが出せるのでスムーズにできていますが、ハーフコートオフェンのコントロールは大学とBリーグでは全然違うので、学んでレベルを上げないといけない。ただ、ミスをすることは恐れていないですし、コーチもそう言ってくれています」

河村勇輝という絶対的なエースが去った新しい横浜BCは、キングも語ったように全員で攻める新たなスタイルを標榜している。それは開幕節の仙台戦に続き、この試合でもしっかりと出ていて、第4クォーター後半であっても、日本人選手たちが積極的にアタックを仕掛けていく姿が印象的だった。

ボールシェアをして外国籍に依存しない全員バスケは、すでにチームに浸透しているとキングも手応えを語る。「まず、打たなければラッシに『なんで打たないんだ』と言われることがあります。ここはラッシコーチが来てから根付いた部分だと思います。河村選手がいなくなって、もっとやらないといけないという意識がみんなに芽生えていて、コート上で発揮できています。誰が打ってもいいスタイルで、毎試合ヒーローが変わるのが僕らのバスケです。チャンスでアグレッシブにいかないと周りの選手、コーチがどんどん指摘していて、良いマインドセットでできています」

また、誰もが主役になり得るバスケットを展開していく中でも、キングは「結果で示さないといけないシーズン」と、自分が要となってチームを引っ張っていきたいと強調する。「自分と(森井)健太さん、(須藤)昂矢さんは一番長く在籍しています。チャンピオンシップを目指す以上、自分たちが積極的にエースという自覚を持ちながらやり続けないといけないです」

もちろん敗戦の悔しさはある。それでも「絶対にトップチームも倒せます」というキングの言葉通り、そのポテンシャルがあることを横浜BCは示した。彼らが進んでいる方向性は間違っていない。

日本人の力を信頼し、「昨日の試合前に(会場の国際プールまで)運転で1時間半かかりましたが、今日は45分くらいだったので自分も成長していると思います(笑)」と語るユーモアも備えたトゥオビヘッドコーチの下、チーム一丸となってどこまで進化していけるか。今シーズンの横浜BCは、シーズンを通しての成長を見守りがいのあるチームだ