文・写真=丸山素行 構成=鈴木健一郎

リーグが求める『5000人収容』の条件をクリア

昨日、青山学院記念館ではサンロッカーズ渋谷とアルバルク東京の第1戦が行われた。『渋谷ダービー』として注目されたこの一戦は、観客動員でも注目された。SR渋谷はホームアリーナである青学記念館のキャパシティの問題を指摘されていた。リーグが求める『5000人収容』に満たないのではないか、という指摘である。

だが、この日の青学記念館は両エンド、両サイドの仮設スタンドをそれぞれ増席し、約4600席のレイアウトを実施。立ち見を加えて『5000人収容』としてのハコを整えた。

サンロッカーズ渋谷の宮野事業統括部長によれば、約4600席のレイアウトを実施するのは初とのこと。青山学院との取り決め上、サンロッカーズ渋谷が青学記念館を使用できるのは土日のみ。土曜の早朝から会場設営を始めて試合開始時間に間に合わせ、日曜の試合が終わると即座に撤収作業に入るのが常だった。

ところが今回は大学は春休み期間中。しかも週明け月曜日は春分の日ということもあり、設営と撤収に十分な時間的余裕ができた。今後はこのオペレーションを土日でも実施できるようにし、常に満員御礼になるだけの観客を集めるのがクラブの目標の一つである。

ただスタンドを増やしただけではない。青山学院と協議し、記念館に近い17号館の校舎のトイレの使用許可を得ることで、特に女性のトイレ不足に対応。「観戦の要素としては非常に重要なので、そこはまず確保しました」と宮野事業統括部長は説明する。また、座席の高さや視認性の確保など、座席を増やすことで観客の利便性を損なうことがないような配慮もなされている。

何の知識もない人でも気後れすることない会場の雰囲気

昨日の『渋谷ダービー』第1戦の観客動員は4377名。これまでは1月28日に行われた栃木ブレックス戦での3133人が最多だったから、1000人以上多い観客を集めたことになる。

表参道駅から徒歩3分、渋谷や原宿からも徒歩圏内と『最強の立地』を誇るSR渋谷。クラブとしてもこの利点を今後もっと押し出していく姿勢だ。宮野事業統括部長は「渋谷をホームタウンとして興行をやるようになって7カ月がたちますが、初めてBリーグを見に来る人が一番多いのが特徴です。SNSを見ても『サンロッカーズ渋谷を見に行った』ではなく『Bリーグを見に行った』という表現が多いんです」

サンロッカーズ渋谷というブランドがあまり浸透していないのでは? とも思ってしまうが、クラブとしてはこれをメリットとしてとらえている。「我々としては、初めてプロバスケを見に来る人のファーストコンタクトで、そこで『バスケって面白いね』という環境作りを考えています」

『初心者』を軽く見ては痛い目に遭う。他にいくらでもエンタメがある現在、会場に来てくれた『はじめましての人』に満足して帰ってもらうのは簡単なことではない。その方策は「フレンドリーな環境」だ。

「どなたが来ても楽しんでいただけることを一番に考えています。洗練された雰囲気であるとか、初めて来る人に応援を押し付けない雰囲気とか、そういう『ウェルカム感』を演出していきたいです」

具体的には手拍子や歌を強要しない。何の知識もない人でも気後れすることなく、観戦を楽しめる雰囲気作りだ。まとまった応援としては、ティップオフからSR渋谷が最初の得点を決めるまで全員が立つことぐらい。シンプルがゆえに誰にでもできる、なおかつ会場が一体となる演出だ。

新しいリーグで新しい取り組みを続けるSR渋谷。初めての観戦を考えている人、初めて誰かを会場に連れていく人には、青学記念館は最適な場所と言える。

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