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自分を挙げないステフィン・カリーに「カリーって誰?」

ラッセル・ウェストブルックは、他者の意見を気にも留めない。それがレジェンドの意見だろうが、同じ現役スター選手だろうが、彼にとっては『第三者の意見』でしかなく、聞く必要はないと考えている。

ウォリアーズのステフィン・カリーが今シーズンのシーズンMVP最有力候補にロケッツのジェームズ・ハーデンを推していることをメディアから伝え聞いたウェストブルックは、「どうでもいい」とコメント。

続けざまに、ここ2年連続シーズンMVPを受賞したカリーについて「そもそも、誰?」と言い放つ始末だ。

サンダーで孤軍奮闘を続けているウェストブルックには、自身こそシーズンMVPに相応しいという自負がある。昨年オフにフリーエージェントの権利を行使したケビン・デュラントがウォリアーズに移籍した後、サンダーは低迷すると予想されたが、ウェストブルックの完全なる『ワンマンチーム』となったチームは西の6位にまで順位を上げている。

ウェストブルックのパフォーマンス、スタッツは驚異的で、1961-62シーズンのオスカー・ロバートソンに次いでNBA史上2人目の『平均トリプル・ダブル』達成も目前に迫っている。本来ならば、ハーデンと並びシーズンMVPの最有力候補に挙げられるべき存在だ。

カリーは、ウェストブルックの驚異的なパフォーマンスを軽視しているわけではない。成績が良いチームからシーズンMVPが選ばれるべきという一般論を言ったまでなのだが、あのコービー・ブライアントも認めるほど自尊心の強いウェストブルックの耳にそのコメントが届いてしまった。

周囲が自分を認めなければ、その反発をパワーに変えるのがウェストブルックだ。その直撃を受けた気の毒なチームはラプターズだった。3月16日の試合でウェストブルックは24得点10リバウンド16アシストを記録し、今シーズン34回目のトリプル・ダブルをマーク。

特筆すべきは、疲労が蓄積しているこの時期に、4試合連続してトリプル・ダブルをやってのけたということだ。

本人は決して認めないだろうが、シーズンMVP候補の話に必ずついて回る「チームを勝たせられる存在かどうか」という議論が発奮材料になっているのは間違いない。ハーデンは平凡だったチームを上位へと押し上げたが、デュラントが抜けたチームをプレーオフに導けば、それは「チームを勝たせられる存在」と言えるのかもしれない。

いずれにしても、これだけのパフォーマンスを連日連夜続ける中、投票権を持つアメリカ国内のメディア関係者は「ハーデンかウェストブルックか」で頭を抱えているに違いない。

ハーデンのパフォーマンスも驚異的だが、今シーズンのシーズンMVPレースは近年稀にみる激戦。改めて『シーズンMVPに相応しい選手』について考えさせられるシーズンとも言える。