残り36秒、佐々木のプルアップスリーでオーバータイムの熱戦を制す
10月5日、三遠ネオフェニックスがアウェーで琉球ゴールデンキングスと対戦。オーバータイムにもつれる激闘となったが、ここ一番でチームの核となる大浦颯太、佐々木隆成のガードコンビがタフショットを沈め、96-92で開幕戦を制した。
試合の出だし、三遠はリバウンド争いで後手に回り、琉球により多くの攻撃回数を与えてしまったのが響き38-46とリードを許して前半を終える。第3クォーターに入っても琉球のペースは続き、残り6分半で15点のビハインドを負った。しかし、ここで琉球はゴール下を支配していたジャック・クーリーがテクニカルファウルを吹かれて、個人3つ目のファウルとなりベンチへ下がることに。これで試合の流れが変わると、三遠はテンポの良いボールムーブからアドバンテージを取れる箇所を的確に突いていくなど、状況判断の優れたオフェンスを展開していくことで盛り返す。
そして第4クォーターに入っても三遠のリズムは続いていく。このクォーターで琉球のフィールドゴールを16本中4本成功に抑えるタフな守備を披露すると、ヤンテ・メイテンのゴール下に加え、デイビッド・ダジンスキーが、要所で3ポイントシュートを沈めていくことで残り21秒に3点を勝ち越す。直後のポゼッションで連携ミスから岸本隆一に3ポイントシュートを決められ、オーバータイムに持ち込まれてしまうが、ここでチームは集中力を切らさなかった。琉球にミスが増える中、手堅いプレーを続けた三遠は残り1分半に大浦のスクープショット、残り36秒に佐々木がプルアップの3ポイントシュート成功と、5点のリードを奪い粘る琉球を振り切った。
勝利を決める一撃を沈めた佐々木だが、試合全体でフィールドゴールは12本中4本成功の11得点とシュートタッチは良くなかった。それでも、三遠のエースは佐々木であり、ここ一番でシュートを打つのが彼であることはチームの共通理解だ。
大野篤史ヘッドコーチも「彼に最後を託すつもりでした」と信頼を語る。そして、佐々木の精神面の成熟をこう称える。「今年、一緒になって3年目になりますが、僕が言わなくてもその自覚が増していますし、成長が著しいです。最後、自信を持って打ってくれました。シュートが入った、入らないというより、その過程が一番良かったと思います」
「大事なところで大浦と僕がツーガードとして出ることが自分たちの武器」
最後のビッグショットに加え、8アシストと司令塔としてゲームメークも光った佐々木は、「チームで我慢できたのは収穫の一つです。相手ではなく、自分たちにフォーカスすればもっと良いバスケットができます。今日はチーム全員が気持ちが入っていて本当に勝ててよかったと思います」と語る。
そして指揮官の信頼、エースとしての自覚についてこう続ける。「一つひとつの指示や言動で信頼されているのは伝わりますし、その中で大事なところで大浦と僕がツーガードとして出ることが自分たちの武器であることは自覚しています。苦しい時にやれる選手を、個人的に目指しています。そこで信頼されてコートに出られるのは大きいですし、やりやすいです」
今夏、佐々木はパリオリンピック代表の12名には選出されなかったが、サポートメンバーとしてチームに帯同した。「やっぱり富樫(勇樹)さん、(渡邊)雄太さんは代表のキャプテンとしていろいろなことに気を遣いながらやってくれていて、そういうのを近くで見られたのは大きかったです」と、三遠で自身が担っていくべきリーダーシップに関しては様々な学びを得られたという。
また、「世界のトップ選手を見て、どういう風に試合に臨んでいるのか、どういう強度でディフェンスをやっているのかが見えたのは自分にとってプラスになっています」と続け、特に印象に残った出来事をこう教えてくれた。
「(五輪前のトレーニングマッチで対戦した)セルビア代表の選手が、世界のトップにいるのに練習試合でも前から激しくディフェンスをやり続けていました。あの姿は見習わないといけないですし、取り入れていきたいと思います」
佐々木はあと一歩のところでオリンピックの大舞台に立つことができなかった。しかし、今夏の濃密な経験によって、彼は心身ともによりたくましさを増した。優勝候補、三遠の顔として佐々木がよりスポットライトを浴びることを予感させる開幕戦でのパフォーマンスだった。