ホークス

約1000万ドルが保証されていた契約を破棄して引退

各チームがトレーニングキャンプを始め、強いチームもそうでないチームも現時点では0勝0敗のイーブンで、前向きな期待を持って新たな旅路をスタートさせた。しかし、本当の意味で『新たな旅路』へと乗り出した者もいる。2022年のNBAドラフト1巡目16位でホークスに指名されたAJ・グリフィンは、たった2シーズンを過ごしただけでNBAから身を引くことを決めた。

グリフィンのキャリアは素晴らしい滑り出しを見せた。ルーキーイヤーはローテーション外から始まったが、最初はトレイ・ヤング欠場の穴を埋める形で、その後はベテランのジャスティン・ホリデーからプレータイムを奪う形で頭角を現した。バランスは良くてもヤング以外の得点源がいなかったホークスで、グリフィンは思い切り良く攻める姿勢を貫くことで結果を出していく。1年目は72試合に出場、そのうち12試合は先発を任された。19.5分の出場で8.9得点、3ポイントシュート成功率39.0%は前途を照らすかのような数字だった。

しかし2年目の昨シーズンは足首の捻挫を含むケガが続いて20試合の出場に留まり、オフにはロケッツにトレードされた。それでもグリフィンの価値が決定的に落ちたわけではない。ホークスはNBAドラフト全体1位でザッカリー・リザシェイを指名。グリフィンの放出は同じスモールフォワードの大物ルーキーの出場機会を確保するためだ。

この時点でグリフィンはまだ引退を決断してはいなかった。トレード先のロケッツでサマーリーグの5試合に出場し、平均11.6得点を記録している。その後もロケッツの練習施設に何度か姿を見せ、新たなチームメートたちと自主トレーニングを行っていた。その頻度は次第に落ちていったが、オフはチーム側が選手を拘束できる期間ではなく、ロケッツは特に気にしていなかった。

だが、トレーニングキャンプ開始を数日後に控えてグリフィンは引退を発表した。ロケッツは彼の申し出を受けて契約のバイアウトに応じたが、4年1700万ドル(約26億円)のルーキー契約の後ろ2年で1000万ドル(約15億円)近くが保証されていたにもかかわらず、グリフィンは25万ドル(約3800万円)を受け取って契約を解消したという。

NBAから離れる作業を完了させたグリフィンはyoutubeにメッセージを投稿した。「僕がバスケから離れる理由を説明したい。簡単に言えばイエスに従うためだ。すごく損なことをやっていると多くの人が思うだろうけど、神に仕えることが僕の喜びだ」

「僕がイエスに人生を捧げると決めたのは2020年のこと。そこから価値観が変わり始めた。バスケットボールが僕のすべてで、それが生きる理由だと思っていたけど、僕たちの誰もが神を称えるために作られた。僕らはその目的に歩み寄らなければいけない。デューク大でもホークスでも、ロケッツに少しだけいた時も、僕は神の恵みと慈悲によって福音の知らせを広め、神に仕えながらバスケットボールをプレーしていた」

「でもそれは人生の一時期のことで、これからは新しい道を歩む。ファン、エージェント、家族、この旅路で僕を支えてくれたすべての人に『ありがとう』と言いたい。僕のバスケの才能を見せる機会を与えてくれたNBAにも。僕は君たちのために祈る。僕のためにも祈ってほしい。神のご加護がありますように」