カール・アンソニー・タウンズ

ワンビッグとしてフィジカルに戦い抜けるかは未知数

トレーニングキャンプが始まる前週に、カール・アンソニー・タウンズがジュリアス・ランドルやドンテ・ディヴィチェンゾとのトレードでニックスへ加入することになりました。これまでニックスはOG・アヌノビーやミケル・ブリッジスといった実力者を獲得してチームを強化してきましたが、タウンズという紛れもないスター選手の獲得で、優勝への期待値を大きく上げています。

タウンズの最大の特徴はセンターとしてのインサイドプレーをしっかりとこなした上で、正確無比なアウトサイドシュートを持っていることで、昨シーズンも3ポイントシュート成功率41.6%を記録しました。総合的な得点効率を示すトゥルーシューティングにおいては、ランドルが56.9%とビッグマンとしては低かったのに対して、どこからでも点を取れるタウンズは62.5%と優秀な数字を残しており、フィニッシュ精度には大きな違いが生まれるでしょう。

また、スクリーンからのポップで外から決められるタウンズの存在は、単に成功率が高いだけでなくインサイドにスペースを生み出し、ジェイレン・ブランソンのドライブアタックを助ける効果も出るはずです。タウンズ自身もオフボールで動くチームメートにパスを出すのが好きなタイプで、ジョシュ・ハート、アヌノビー、ブリッジスとカットプレーの上手いウイングも揃っており、タウンズを中心とした連携が生まれます。

チーム戦術としてはハンドラー任せな部分が大きいニックスですが、タウンズの資質に個人の得意技を組み合わせることでオフェンスパターンが大きく増えれば、それはチームの大きな強みになるはずです。

ニックスの強みであるハードワークの部分でもタウンズはフィットします。タウンズは3ポイントシュートを多投しながらも、しっかりとオフェンスリバウンドにも飛び込んできます。2018-19シーズンは3ポイントシュート成功率が40%を超えつつ、オフェンスリバウンドも3.4本を記録していますが、このシーズンのティンバーウルブズのヘッドコーチがトム・シボドーだったこともあり、タウンズのハードワークには信頼を置いているはずです。

ただし、ハードワークを強いるニックスの戦い方は諸刃の剣でもあります。近年のタウンズはケガの多さもあってプレータイムが短く設定されており、若いころのように無理が利くわけではありません。加えてウルブズ特有のツインタワーやトリプルタワーでの戦術に慣れてきた中で、ワンビッグとしてフィジカルに戦い抜けるかは未知数の部分もあります。

『何でもできる』のがタウンズの強みですが、『何でもやらせてしまう』とガス欠に陥ったり、最悪の場合はケガへと繋がります。それだけに役割の定義はニックスが戦い抜くためのキーファクターになるでしょう。

いずれにしてもニックスにとって最高のオフになったことは間違いありません。働き者のブリッジスにオールスターセンターまで加えたからには、目指すはチャンピオンリングのみ。タウンズの獲得により、ニックスが新シーズンの主役へと躍り出ました。