小野龍猛

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE、野口岳彦

栃木に敗れるも「そこまでネガティブになることではない」

千葉ジェッツvs栃木ブレックスの第2戦は、チャンピオンシップさながらの激闘となった。最後まで試合をあきらめない小野龍猛が、試合終了のブザーと同時に3ポイントシュートを沈めたが、わずかに2点届かず、千葉の2連勝はならなかった。

特に後半は、クォーター開始から数分で栃木のチームファウルを4に到達させるなど、千葉のインサイド陣が奮闘し、流れをつかみかけるシーンもあった。しかし、「栃木さんは昨日負けてますから、そう簡単にはやらせてもらえないというのが見ていて分かりました」と小野が言うように、栃木は土俵際で踏み留まった。

「今日は栃木の勝つという気持ちがすごく強かったと思います」と、栃木の気迫に圧倒された印象を持つ小野だが、劣勢を強いられながらも2点差で試合を終えたことに手応えを感じている。

「ずっと栃木さんのペースでやっていた印象です。でも、最大12点差までついて、最後は2点差です。よく粘ったな、よく我慢したなって感じはしますね。負けたことに対してはすごく悔しいですけど、そこまでネガティブになることではない」

終始相手のペースで試合を進められながら、勝利に手が届きそうな戦いができたことには価値がある。また千葉にとっては、この大一番を1勝1敗のタイで終え、栃木とのゲーム差をキープできたことも大きな意味を持つ。

小野龍猛

「控えに回ってからの仕事の仕方がまだ定まっていない」

小野は千葉での過去5シーズン、約30分間コートに立ち続けるなどチームの主力選手として活躍してきた。直近の3シーズンは出場した全試合で先発を務めている。だが、昨年10月13日の三遠ネオフェニックス戦で右手舟状骨骨折を負って19試合を欠場し、復帰後はベンチからの出場しかない。当然、オフェンスの主要スタッツは軒並み下降した。小野もベンチからの出場に戸惑いを隠せず、「やっぱり、ずっとスタートで出ていた分、控えに回ってからの仕事の仕方がまだ僕の中で定まっていないです」と明かす。

また、以前では考えられないことだが、プレータイムが10分を切る試合があったり、今回の第1戦のように出番がないこともある。皮肉にも、チームが絶好調で突っ走っていることが、小野の復活を難しくしている。「今はチームとして出来上がっている分、ケガをした自分が完成されたチームの中に入っていく難しさを感じています」と、小野は言う。

それでも、チームの勝利を第一に考えつつ、このチームには自分の力が必要だと信じて準備を続けている。「特にネガティブになることなく、チームのためにどう戦う。自分の中では、自分が出た方が良いと思いつつやっています」

第1戦で出番は訪れなかったが、第2戦では持ち味であるポストプレーがオフェンスの一つのバリエーションとして機能し、21分間で9得点を挙げた。大野篤史ヘッドコーチは「オフェンスが停滞したのが一番」と、起用の理由を明かす。「ボールが回らずフロアバランスが取れない時に、原(修太)やアキ(チェンバース)よりも龍猛のほうがコートを把握している。得点を取るというよりも、彼がいることで潤滑油のようになり、スマートにやってくれた」

あるべきチーム内競争の先に待つものは?

大野ヘッドコーチが名前を挙げたように、フィジカルなディフェンスで評価を上げる原やチェンバースを「すごく成長している」と小野は評価している。だからこそ、攻守に要となる小野の長期欠場があっても、千葉はリーグ最高勝率を守り続けていられるのだ。

もちろん、選手としてはプレーでチームに貢献することが一番の喜びであり、自分が出ていないチームが勝ち続けたとしても、そこに微妙な感情があるのは当然だ。だからこそ、小野は現在の状況に苦悩しながらも「チームが勝つためには、どういった状況で、どういったことが必要なのかを相談しつつやっていきたい」と、自分の持ち味をチームの中で最大限に生かし、貢献する術を探り続けている。この答えが見つかれば、千葉にとっては大きな上積みとなる。その時こそ、過去2シーズンに取り損なったBリーグのタイトルをつかみ取れるのかもしれない。