渡邉飛勇

川崎に惜敗「悔しいです。自分のせいで負けた気持ちがあります」

9月22日、信州ブレイブウォリアーズが天皇杯2次ラウンドで川崎ブレイブサンダースと対戦した。試合は序盤から激しい点の取り合いとなったが、第4クォーター後半に失速したことが響き、91-98で競り負けた。

敗れたとはいえ、今シーズンはB2の信州にとってB1の川崎と互角の展開を見せたことはポジティブな材料だ。リーグ有数の支配力を持つペリン・ビュフォード、B2を代表するスコアラーのテレンス・ウッドベリー、日本代表ビッグマンの渡邉飛勇といった大型補強による効果をしっかりと披露した。

ビュフォードは前日の試合を欠場し、この日もベンチスタートと調整段階だが、26分18秒のプレータイムで、8得点12アシスト8リバウンドと、あと一歩でトリブル・ダブルのスタッツを残した。そしてビュフォード以上のインパクトを与えたのが、ハンドラーとのコンビプレーによってゴール下で次々と得点し、13得点4リバウンドを記録した渡邉だった。

ただ、渡邉に満足感はない。2桁得点よりも、ファウルトラブルに苦しんだことや第4クォーターでミスが目立ったことへの後悔のほうが強く、渡邉はこう語る。「悔しいです。自分のせいで負けたという気持ちがあります。川崎は強いB1のチームですし、シーズンのための良いステップになったと思っています。ただ、川崎のディフェンスは、ぺリン選手にすごく集中していたので、特に第4クォーターに僕がもっと(ビュフォードからの)パスをキャッチして決めきるべきでした」

ほろ苦い終わり方だったとはいえ、渡邉は99-92で勝利した前日の愛媛オレンジバイキングス戦でも6得点3ブロックを記録。間違いなく信州の貴重な戦力になることを天皇杯2次ラウンドの2試合で証明した。パリ五輪出場もあって、チーム合流からまだわずかしか経っていないが、石川海斗やビュフォードと息の合った連携も見せており、大きな手応えを語る。

「石川選手、ペリン選手、信州のシステムは素晴らしいです。そして(勝久)マイケルコーチが教えてくれたこの1カ月で、すでに成長できています。でも、まだまだこれからです。ペリン選手のプレースタイルは特別で、シュートモーションで飛んでいる中でパスをする相手も探しています。もっと彼のプレースタイルに慣れないといけないです」

渡邉飛勇

「今回の第4クォーターみたいなプレーで自分にイラつきたくはない」

結果は残念だったが、信州は前評判通り、B2の優勝候補と言われる底力を見せた。特に印象的だったのは207cmの渡邉、198cmのビュフォード、203cmのウッドベリー、198cmのエリオット・ドンリー、191cmのアキ・チェンバースによる高さと機動力を兼備したラインナップだ。渡邉も「このチームは全員が役割を持っています」と語る中で、この布陣に自信を見せる。

「全員がスイッチできて、どんな守備の戦術もできます。そしてアキとドンリーもセカンドハンドラーとして良いですし、ウッドベリーも守るのが難しい選手。ディフェンスで負けないですし、オフェンスは5人が脅威です」

この週末、渡邉のプレータイムは愛媛戦で16分26秒、川崎戦で17分45秒と主力として起用された。彼がプロ入りしてローテーション入りするのは初めてだ。「プレータイムが増えてすごく楽しいです。これくらいのプレータイムをもらえたのは6年ぶりくらいです。これまでは3分くらいだったので、アジャストしていかないといけないです」というように、渡邉にとって待ち望んでいた環境だ。

そして、今回彼が見せたプレーは来るべきレギュラーシーズンでの期待がさらに高まるモノとなった。渡邉も「この試合を見て第3クォーターまでのプレーを続けることができたら、僕は最高の日本人ビッグマンになれそう」と語る。

しかし、だからこそチームが失速する一因を作ってしまった第4クォーターの自身のプレーを許せない。「まずは悔しいです。フィルムを見て、もっと良くなって今回の第4クォーターみたいなプレーで自分にイラつきたくないです。他のチームメートは、それぞれ仕事をしましたが、自分はできなかったです」

これからの渡邉の課題は、ファウルトラブルも含めた安定感の向上だ。それは本人も痛感している。自らに的確なパスを供給してくれるチームメート、育成能力に長けた指揮官と恵まれた環境の中、渡邉は大きなステップアップを迎えようとしている。