アンソニー・デイビス

チーム事情を受け入れるも勝てないシーズンが続く

アンソニー・デイビスはレイカーズに加入した2019年夏から「パワーフォワードのポジションでプレーするのが好きだ」と繰り返し語っている。ゴール下での肉弾戦で消耗することを彼は望んでいないし、彼が持つスキルの多彩さ、ガードまでスイッチして守れる能力は、パワーフォワードで動きながらプレーする方がより効果的に発揮できる。

しかし、過去5シーズンでデイビスがパワーフォワードとしてプレーできた時期はほんのわずかで、昨シーズンは全プレー時間の97%でセンターを務めた。クリスチャン・ウッドとジャクソン・ヘイズ、コリン・キャッスルトンの控えセンター陣はケガが多くコンスタントにプレーできず、その一方でパワーフォワードの先発には八村塁が定着。さらにレギュラーシーズンの大半が勝率5割前後という状況で若手を使う余裕がなく、デイビスをセンターに固定して戦うしかなかった。

センターにデイビス以外の選手が定着して結果を出した唯一の例が2019-20シーズンのドワイト・ハワードで、この時のプレーオフではハワードとジャベール・マギーがペイントエリアでの肉弾戦を引き受け、デイビスはパワーフォワードのポジションでそのスキルと創造性を思う存分に発揮して優勝を勝ち取った。しかし、そのハワードは2年後にレイカーズに呼び戻した時には衰えており力を発揮できず。以後、デイビス以外にセンターを任せられる選手はいない。

今オフもセンターは最大の補強ポイントだったはずだが、ヨナス・バランチュナスを取り逃した。先日加入したクリスチャン・コロコが血栓症によるドクターストップから解放されれば2ウェイ契約を結んで戦力にできるが、それでもデイビスと比べて実績で劣る若手が一人増えるに過ぎない。

センターの控えの誰よりも八村の方が信頼できるのが現状で、センターにデイビス、パワーフォワードに八村というラインナップが採用されるだろう。ただ、これは大きな異を唱えることなくチームの方針に従っているデイビスにはストレスなはずだ。彼はこの5年間ずっとパワーフォワードでプレーしたいと言い続けているが、無視され続けている。

デイビスはこの5年間の多くで、特にこの2年間はほぼセンター専業でのプレーを受け入れているが、これはレイカーズの将来に大きな災いとなりかねない。スーパースターの意向をフロントが汲み取るのはNBAでは当たり前のことで、それが単なるワガママならともかく、デイビスの場合は「自分が最もチームに貢献できる」という理由でパワーフォワードでのプレーを望んでいるにもかかわらず無視され続けている。これを彼が「フロントから冷遇されている」と感じても不思議はない。

盟友レブロン・ジェームズがいる限り、この問題は表面化しないかもしれないが、いずれレブロンが去った時、「デイビスが『レブロン以後』を支える大黒柱」というレイカーズの目論見ははかなく消えるかもしれない。

デイビスとしっかりコミュニケーションを取ってストレスを溜めさせないこと。そして信頼できるビッグマンを獲得すること。これはレイカーズの今シーズンだけでなく、今後にも大きく影響する課題だ。