「Bリーグは素晴らしいレベルで、競争力が高い」
今シーズン、川崎ブレイブサンダースは大きな変革の時を迎えている。昨シーズン終了後、10年以上に渡ってエースを務めていたニック・ファジーカスが引退。さらにリーグ屈指のガードである藤井祐眞が移籍と、2人のリーグMVP受賞者がチームを去った。また、過去5年間に渡って指揮を執っていた佐藤賢次氏も退任と、新たなサイクルに突入した。
チェコ代表の指揮官を含め、欧州での実績豊富なロネン・ギンズブルグ新ヘッドコーチのもと、今シーズンの川崎が強調するのは堅守速攻の原点回帰。ビッグマンも含めてコートの5人全員が足をよく動かし、平面での激しいプレッシャーからトランジションにつなげるアップテンポなバスケットボールを推し進めていく。
この川崎の目指すスタイルを最も体現している1人が、新戦力である28歳のアリゼ・ジョンソンだ。206cmのジョンソンは2018-19シーズンからNBAとGリーグでプレーし、NBA通算76試合出場。昨シーズンは韓国KBLの釜山KCCイージスでリーグ優勝に貢献している。高校時代はポイントガードもこなしており、優れたボールハンドリング、抜群の機動力を誇る。
9月15日に行われた横浜ビー・コルセアーズとのプレシーズンゲームでも、ジョンソンは持ち味を発揮した。自らリバウンドを取ると、そのまま圧倒的なスピードで相手のゴール下まで一気に攻め込んで得点。さらにキックアウトからのパスなどでトランジションの起点になり、フィールドゴール8本中6本成功の13得点に15リバウンド6アシストと、オールラウンドな活躍でチームを勝利に導いた。
今後がより楽しみになるプレーを見せたジョンソンは、次のようにBリーグ行きを決めた理由を語る。「日本の文化に興味があったし、日本では質の高い暮らしを送れると聞いていた。実際、もう日本のことは大好きになっている。アメリカでは当たり前のウーバー、ApplePay、GPS機能といったサービスを利用するのが難しい国もあるけど、日本は問題なくてとても暮らしやすい。また、Bリーグは素晴らしいレベルで、競争力が高い。アスリートとして成長できるリーグと聞いていた。もちろん川崎が素晴らしいオファーをくれたし、とても成長しているリーグの一部になりたいと思ったんだ」
渡邊雄太とは旧知の仲「彼の日々の生活を見ていて、大ファンに」
ジョンソンは、献身的なプレーこそが自身の持ち味だと強調する。「ドライブが好きだし、他の選手をからめたプレーをしていきたい。そして味方のための泥臭い仕事もしたい。チームが求めることをなんでもやることが僕のアイデンティティだ。ポイントフォワードの役割をこなしたり、ディフェンス、リバウンド、あらゆることでチームを助けたいんだ」
ジョンソンといえば、今シーズンからBリーグでプレーする渡邊雄太がジョンソンのBリーグ加入の発表を受け、自身のXに「アリゼ日本でプレーするのえぐい」と投稿したことでも話題となった。ジョンソンと渡邊は2020-21シーズン開幕前、ラプターズのトレーニングキャンプで開幕メンバー入りをかけて競い合った仲だ。
渡邊についての思い出をジョンソンは次のように振り返る。「僕たちはラプターズのトレーニングキャンプでロースターの枠をめぐって争っていた。雄太とは素晴らしい時間を過ごした。彼は良い人柄で、高いプロ意識の持ち主だ。彼のプロアスリートとしての日々の生活を見ていて、大ファンになったんだ」
そして「日本バスケットボール界の顔である彼が、僕が日本に来ることに反応して、評価してくれたのはうれしかった。ワークアウトへの気分が高まったよ。彼とマッチアップできることを楽しみにしている。そして僕が勝てたらいいね」と、対戦できる機会を心待ちにしているようだ。
スタッツに残らない部分での貢献も大切にするジョンソンのチーム愛は、加入前の取り組みにも表れている。川崎からのオファーを受けた際、チームのこれまでの歩みについて調べ、その上で新たな歴史を作ることに大きなやりがいを感じたという。
「昨シーズン、チームがプレーオフに行けなかったことも、これまでどんな選手がいて、今年のチームがこれまでとプレースタイルが変わることも知っている。チームが新たな道に進んでいく中で、その一員として僕を選んでくれたことがハッピーだ。チームの爆発力となり、システムを変えることができればいいと思う。僕を獲得したことには理由があり、オフィスの人も含め、チーム全員が満足するために、自分のできることを何でもやっていきたい」
ジョンソンは最後に「ハードにプレーして勝利に貢献し、まずがチャンピオンシップに導くのが目標だ」とファンに向けて語ってくれた。ジョンソンが自陣からボールプッシュをし、敵陣まで一気に駆け上がるシーンがどれだけあるかは、川崎が自分たちのリズムでプレーできているかどうかを表す重要な指標となるはずだ。