アイザック・オコロ

「すでにチームにいる選手の可能性」を重視したオフに

キャバリアーズの今オフは慌ただしいものだった。再建を主導したJ.B.ビッカースタッフを解任してケニー・アトキンソンを新たなヘッドコーチに招き、コーチングスタッフを一新。それと並行してエースのドノバン・ミッチェルと3年1億5000万ドル(約230億円)、エバン・モーブリーに5年2億2400万ドル(約340億円)、ジャレット・アレンに3年9100万ドル(約140億円)の契約延長を結んだ。

そんなオフの締めくくりは、ペリメーターディフェンスのスペシャリストであるアイザック・オコロとの契約延長となった。2020年のNBAドラフト1巡目5位でキャブズに指名されたオコロは、その指名順位に見合った活躍をしているわけではないが、それでもデビューから4シーズンに渡って堅実な控えフォワードとしてチームに貢献してきた。制限付きフリーエージェントとなった今オフの終盤まで去就が決まらなかったが、3年3800万ドル(約57億円)の契約は希望通りとは言わないまでも満足に足るものだろう。

コービー・アルトマン球団社長は今オフに入る時点で「チーム内のタレントに目を向けたい。すでにチームにいる選手の可能性を見逃したくない」と語っているが、オコロとの契約更新はその言葉通りの行動となった。

ミッチェルとダリアス・ガーランドがバックコートで組む以上、フォワードの選手は彼ら2人の分までハードワークしてディフェンスを支えることが第一に求められる。身体の強さとスピードを兼ね備えたオコロは、スター選手ではなくてもキャブズに必要な役割を全うできる選手だ。それを理解している一人が、エースでありチームリーダーのミッチェルで、ロッカールームでは隣同士、今オフも一緒にトレーニングを積んでいるという2人の間には強い信頼関係がある。

またオフェンス面でもオコロはまだ伸びしろを残している。昨シーズンの得点は9.4と目立つ数字ではなかったが、ルーキーシーズンから毎年確率を上げている3ポイントシュート成功率は39.1%。3ポイントシュート試投数が3.1とチャンスが限られているにもかかわらずこの成功率は決して悪くない数字。昨シーズンはシュートタッチの良さから彼にエクストラパスが出る回数が増え、それを確率良く決めた。『守備選任』のはずの選手がチャンスをこれだけ決めてくれればチームにとっては大きなプラスだ。ガードの2人がボールを持つ時間が長いキャブズで、オコロはボールに触れる回数が少なくても機能している。

東カンファレンスではニックスやセブンティシクサーズが大型補強で王者セルティックスを追う展開となり、西カンファレンスから一歩遅れていた競争が激化している。キャブズは既存のメンバーを重視しながら指揮官を代えることで新たな成長をうながし、それに対抗するつもりだ。ミッチェルが引っ張り、ガーランドやモーブリーといった若いコアがさらに良いパフォーマンスを見せることが必要となるが、目立たなくても攻守に貴重な働きのできるオコロが今まで以上にその仕事に集中することも、大事な要素となりそうだ。