アルペラン・シェングン&ジェイレン・グリーン

ドラフト同期が次々とマックス契約を勝ち取る中……

ジェームズ・ハーデン退団から4年、若手を中心としたロケッツの再建は遅々として進まなかったが、昨年オフにフレッド・バンブリートにディロン・ブルックスと経験あるベテランを獲得してチームを強化。終盤の失速でプレーオフ進出を逃したものの、41勝41敗と勝率を5割に乗せ、チーム再建は大きく前進した。

ベテランを加えたとは言え、チームの中心を担うのは若手だ。その筆頭は同じ2021年NBAドラフト組のアルペラン・シェングンとジェイレン・グリーンであり、それに続くのがアメリカ代表のセレクトチームに参加したジャバリ・スミスJr.とアメン・トンプソン、キャム・ホワイトモアにケガから復帰するタリ・イーソン、全体3位指名のルーキーであるリード・シェパードと、タレントは引きも切らない。

しかし、この若いチームであってもサラリーキャップの新ルールによる重圧からは逃れられない。2021年NBAドラフト組では全体1位指名のケイド・カニングハム(ピストンズ)、3位のエバン・モーブリー(キャバリアーズ)、4位でルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞したスコッティ・バーンズ(ラプターズ)、8位のフランツ・バグナー(マジック)が次々にマックス契約を勝ち取っているが、ロケッツはシェングンにもグリーンにも新契約を与えていない。このままだと彼らは来年オフに制限付きフリーエージェントとなる。

再建中のピストンズやラプターズはまだしも、プレーオフチームのキャブズも迷わずモーブリーに新契約を与えられるのに、ロケッツはシェングンとグリーンの年代以降にタレントが集中しすぎていることで慎重にならざるを得ない。考慮すべきは2人の価値だけでなく、それに続く選手たちを含めた相対的な評価だ。『チームの将来を担うタレント』だからとマックス額での契約延長を続けていれば、来年のスミスJr.で、再来年のトンプソンでサラリーキャップに余裕がなくなり、仮にシェパードが大活躍していても誰かをあきらめなければならなくなる。

全員が活躍していればそれでいいが、5年2億ドル(300億円)規模の契約を連発した挙句に何人かが思うように機能しなければ、チームは行き詰まる。そうでなくともタレントの偏重はプレータイムと役割の渋滞を意味するため、選手個々に十分な実力があったとしても全員が活躍するのは非現実的でもある。だからこそロケッツは決断を先延ばしにしている。

実際のところ、2021年のNBAドラフトで16位指名のシェングンは『ニコラ・ヨキッチに続くNBAのトップスター』になるポテンシャルを秘めており、今すぐマックス額での契約延長を決めてもいいタレントだ。ただ難しいのはグリーンのプライドを傷付けるのは悪手だということ。2人ともマックス契約を目指して良い競争意識を持たせたまま、成長し続けてくれるのがロケッツにとっては一番良い。

いずれはトレードでタレントが数年の間に偏るバランスの悪さを解消することになるかもしれないが、その時に彼らの価値を最大化しておくことはロケッツにとって大きなメリットとなる。

いずれにしても、ロケッツは2人への新契約提示を先延ばしすることを選んだ。来年オフに制限付きフリーエージェントになるとしても、優先権はロケッツにある。ドラフト同期が先に大型契約を得ている状況に2人が気を悪くすることだけが懸念事項だが、そのケアさえできていれば、ロケッツにとって決断を先送りにするのは『良い選択』だ。

ロケッツには明るい未来が広がっているように見えるが、可能性は無限であっても成功が約束されているわけではなく、次の一手を間違えたくはない。イメイ・ユドカの下でのチームの成長はもちろん、フロントが今の状況をどう活用するかにも注目だ。