「自分が何とかしてリズムを変えられれば」
3月30日、全体勝率1位と2位が激突する『B1頂上決戦』となった千葉ジェッツvs栃木ブレックスの第1戦。予想通りレベルの高い攻防が続く中、95-86と千葉ジェッツが競り勝った。勝敗を分ける一つの大きな要素となったのが田口成浩の攻守に渡る活躍だった。
実際には「ディフェンスをベースとして、得点をプラスした活躍」と見るべきだろう。ベンチスタートではあったが第1クォーターから投入された田口は、栃木のキーマンとなる遠藤祐亮をベタ付きで守る役割を与えられた。かつてはディフェンス専任だった遠藤だが、このところ得点面での成長が著しく、今の栃木においては彼の外角シュートがオフェンスに勢いを与えるスイッチとなる。その遠藤をマークした田口は、運動量とフィジカルをフルに発揮してプレッシャーを与え続け、沈黙させることに成功した。
この試合、栃木に最も勢いが出た時間帯は後半開始直後の2分半。遠藤は次々と託されるチャンスをことごとく決め、あっという間に11得点を荒稼ぎした。後半のスタートから、先発メンバーの石井講祐がコートに立っていたが、大野篤史ヘッドコーチはたまらず交代を指示。コートに戻った田口は、前半以上のプレッシャーを掛けることで波に乗った遠藤をシャットアウトした。
「後半の出だしで遠藤選手が当たり始めたので、自分が何とかしてリズムを変えられればと、強い気持ちを持って守りました。少しは変えられたのかなと思います」と田口は語る。千葉が終始リードする展開ではあったが、あそこで栃木の勢いを断ち切るのは簡単ではない。昨夏に千葉に加入して以降、ディフェンスを磨く努力の積み重ねがあったからこそだ。
「自分は下手糞なんだと初心に戻って」
秋田ノーザンハピネッツ生え抜きで7シーズンを過ごした田口は、秋田では絶対的な選手として常にスタメンに名を連ね、35分以上プレーすることも珍しくなかった。それでも千葉に移籍してからは、ベンチスタートでプレータイムも伸びない。厳しい状況ではあったが、これこそが田口が望んだ環境である。
「ディフェンスがダメだったら出れない、それは自分の中で学んできました。自分は下手糞なんだ、ディフェンスが悪いんだと初心に戻って。同じポジションの選手のディフェンスをよく見て、失敗して学びながら成長できた」と田口は言う。今日は見事に遠藤を封じ込めたが「もっともっと成長したい」とその先を見据える。
秋田でも、残留を目指したりB1復帰を義務付けられたり、常にプレッシャーが掛かる状況に身を置いていたが、優勝争いを演じるチームに身を置いてプレーする重圧は、田口にとって新たな刺激となっている。
「秋田ではキャプテンとして、チームを勝たせること、外国籍選手を含めてチームメートがうまく行くことを考えて全体を見ていました。その中で秋田出身としてプレッシャーもありました。千葉でのプレッシャーは、個人がチームのどんなプラスになれるか。役割を発揮してどう貢献できるか。全体を見るのか、個人かの違いはあります」と、移籍する前と後での意識の違いを語る。今は千葉の一員として、ベンチスタートではあってもまずはディフェンスから、そこに得点を重ねることで勝利に貢献できるとの手応えを感じている。
「今は自分のために、じゃないですけど、自分のためにプレーすればチームに貢献できる、自分の役割ができなければチームに貢献できない、というマインドセットになっています」
遠藤を抑える、という役割を遂行しながら、プラスアルファの貢献として10得点を挙げた。「ディフェンスもしっかりやりますが、得点も求められていると思っています。そこはチャンスが来たら積極的に、いつでも行く気持ちでいます」と、本来の持ち味も出せるようになっている。
今日のプレータイムは14分。秋田での平均出場時間の半分にも満たないが、『B1頂上決戦』で自分の役割を全うし、勝利に貢献したことは大きな満足感になっているに違いない。「一日一日油断できないのが千葉の魅力。そうやって切磋琢磨して強くなっているチームです。そこで勝ち取るにはまた明日も結果を残して、自分で勝ち取るという気持ちでやっていきたいです」