3ポイントシュートを『打たせる』SR渋谷の奇策
サンロッカーズ渋谷vs千葉ジェッツの水曜ナイトゲーム。SR渋谷の3ポイントシュートを打たせる作戦に、オフェンスバランスを崩された千葉だったが、大野篤史ヘッドコーチが「全員ハードに戦ってくれて、良いディフェンスだった」と言うように、17個のターンオーバーを誘発したディフェンスが機能して、87-76で勝利した。
試合序盤、SR渋谷は広瀬健太を富樫勇樹のマークにつけた。だが、アキ・チェンバースがミスマッチから連続でオフェンスリバウンドを奪取しセカンドチャンスポイントへと繋げられ、富樫のボールプッシュから、ギャビン・エドワーズとマイケル・パーカーのセカンドブレイクを許す。それでも、2-8と先行されたところで取ったタイムアウトでトランジションへの対応を確認し、ディフェンスを立て直すと、ライアン・ケリーを強調し、速攻を連発して22-23と肉薄した。その後は第3クォーターまでにリードチェンジ11回、同点になること7回と拮抗した展開が続く。
千葉は強度の高いディフェンスを軸に、ディナイとスイッチディフェンスでターンオーバーを誘発し、それを得点に繋げていった。だが、、SR渋谷に速攻を警戒されトランジションが出せず、前半のフリースロー成功率が30%(10本中3本成功)と低調で突き放すチャンスを逸していた。
SR渋谷は千葉のディフェンスに苦しんだが、数少ないチャンスを決めきり、3ポイントシュートを11本中7本と高確率で沈めたことで接戦に持ち込んだ。
また、SR渋谷は広瀬を富樫のマークにつけただけでなく、ピック&ロールに対してすべてアンダー(スクリーンの下を通り、ゴールへの侵入を防ぐ)で対応した。その結果、スペースが空いた富樫は今シーズン最多となる18本の3ポイントシュートを放ち、7本を成功(成功率38.9%)させた。富樫の得点は伸びたが、周りの選手のボールタッチが減り、オフェンスを単調にさせたことで、千葉オフェンスの爆発力を発揮させなった。
結果的に敗れたことで、「負けたので、そこは失敗」と、SR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチは語ったが「何本入るか分からないけど打たせ続けようと言った」と作戦通りだったことを明かした。
勝敗を分けた、終盤の2つのターンオーバー
千葉が4点リードで迎えた最終クォーターも拮抗した展開が続いたが、「リングの近いところでもアンダーを選択していたので、よりリングに近いところでやろう。勇樹のジャンパーが当たっていたのでそこを使おう。あとは、インサイドアウトだったり、インサイドに一度入れてやっていこう」と、大野ヘッドコーチがオフェンスの内容を変えたことで千葉が流れをつかんだ。
ドライブでペイントタッチし、ディフェンスを収縮させた。ここまで3ポイントシュートを多投していた富樫が、このクォーターでは1本も打たずパスを散らしてオフェンスに変化を付ける。田口成浩や藤永佳昭、パーカーが3ポイントシュートを成功させ、主導権を握った。
SR渋谷はこのクォーターだけで15得点を挙げたケリーの1on1を強調し、2ポゼッション差前後で耐え続けたが、最後はターンオーバーが勝負を分けた。
残り1分10秒、4点のビハインドを背負うSR渋谷は、タイムアウトを要求してオフェンスをデザインする。だが、盛實海翔からケリーへのリターンパスを読まれ、パーカーにスティールされワンマン速攻を許した。SR渋谷は再びタイムアウトを取ってオフェンスを構築したが、パスが合わずポゼッションを渡した。このタイムアウト明けのターンオーバー2つが致命傷となり、SR渋谷は接戦を落とした。
大野ヘッドコーチ「僕が安易な考え方をしてしまった」
勝利したものの、苦戦を強いられた千葉の大野ヘッドコーチは「選手たちに有効なプレーを与えるのが遅かった。自分の責任」と、自らを戒めた。
「アンダーを選択していたので、シュートが入るだろうとあまり対応策を練らなかったところがクロスゲームになった原因かなと。石井(講祐)も富樫もトータルして確率の良い選手なので、いつか入るだろうと。僕が安易な考え方をしてしまったので、そこは反省しないといけない」
一方、敗れたSR渋谷の伊佐ヘッドコーチは「選手は準備してきたことをほぼ100%遂行してくれました。ただオフェンスでのターンオーバーでスティールを10個されてます。ターンオーバーからの失点が18点。リーグNo.1のチームにあれをやってしまったら、どんなプランを立てても勝てない」と、最後に勝負を分けることになったターンオーバーを悔やんだ。
それでも、「前回、千葉さんのホームで公開処刑されたので、『今回はやり返すぞ』とみんなで話し合ってファイトできた。ウチが勝ってもおかしくないゲームと思っているので、ウチも成長している」と、リーグ全体勝率1位の相手にクロスゲームを演じたことを収穫に挙げている。
3ポイントシュートを打たせる作戦を「失敗だった」と評した伊佐コーチに対し、その作戦によって「有効的なプレーを与えるのが遅くなった」と言う大野ヘッドコーチ。戦術面では互角だったと言えるが、千葉のディフェンス力、地力が勝ったゲームとなった。