ステフィン・カリー

フロントへの信任を示すことで新シーズンに集中

ステフィン・カリーは2022年から始まる4年2億1500万ドル(約320億円)の契約をあと2年残しているが、現地8月29日に1年6250万ドル(約94億円)の契約延長に合意したと『ESPN』が報じた。これでカリーとウォリアーズの契約はあと3シーズン続き、その間に彼は1億7800万ドル(約270億円)を稼ぐこととなる。

2009年のNBAドラフトで1巡目7位指名を受けてからウォリアーズ一筋のキャリアを送るカリーは、オールスター10回選出、MVP選出2回、そしてチームを4度のNBA優勝へと導いている。36歳になった今もそのシュート力と勝負強さに衰えは見られず、今夏のパリオリンピックでもアメリカ代表に金メダルをもたらしたばかり。

カリーは全盛期の力を保ち続けているが、ウォリアーズは崩壊の危機にある。2015年から4年間で3度の優勝を勝ち取ったのがピークで、2018-19シーズンにNBAファイナルでラプターズに敗れた後は2年連続でプレーオフ進出を逃し、2022年に4度目の優勝を果たしたが、その後の2シーズンは優勝争いに絡めずにいる。カリーを始め黄金期の主力が年齢を重ねる中で、チーム力を保つのは至難の業。そして今オフにはクレイ・トンプソンが移籍を選択し、『スプラッシュ・ブラザーズ』は解散となった。

ウォリアーズのフロントの一番の心配は、チームが年々戦力を落としていくことをカリーがどう受け止めるか。カリーがいなくなればチームは否応なしに解体となるし、チェイス・センターが満員の観客で埋まる日々も終わる。フロントは常にカリーとコミュニケーションを取り、その意に沿うようなチーム作りを進めてきた。そしてウォリアーズにとって幸いなことに、カリーは他のスター選手がしばしばするような無茶な要求を突きつけることなく、フロントの努力を認め、協調路線を取ってきた。

カリーにとって今回の契約延長は生涯収入を最大化すると同時に、今後3年間を契約で縛られることでフロントへの影響力を失うことを意味する。だからこそ、今回の契約延長はカリーがウォリアーズへの信頼をこれ以上ない形で示したこととなる。

オリンピック終了後、カリーがSNSにレブロン・ジェームズとケビン・デュラントとの写真に「同じチーム、勝つチーム」とのコメントを添えて投稿したことで、カリーが勝つために移籍を選ぶのではないかとの噂が巻き起こっていたが、今回の契約延長でそれも消える。7月の時点でカリーは『Yahoo Sports』の取材に「生涯ウォリアーズであり続けたい」と語っていたが、その言葉通りの行動を取った。そしてウォリアーズは雑音と無縁で新たなシーズンに向けた準備を進められることとなった。