桶谷ヘッドコーチ「被災された方々に何が見せられるか」
アルバルク東京との金曜ナイトゲーム。大阪エヴェッサの桶谷大ヘッドコーチは「まず初めに、今日と明日の試合は、東日本大震災で被災された方々に対して、自分たちがスポーツを通して何が見せられるかということを焦点に当ててプレーしました」と試合の位置付けを語った。
桶谷コーチは大阪を『アンダードック』(かませ犬)と評したが、選手たちは指揮官の思いを体現し、コート上で素晴らしいパフォーマンスを見せた。
外国籍選手オン・ザ・コート数はA東京が「1-2-1-2」、大阪が「2-1-1-2」と前半にズレが生じる。A東京は3月6日の栃木戦で左手首を捻挫したディアンテ・ギャレットが欠場となり、シーズン42試合目にして初めてギャレット抜きの戦いとなった。
先手を取ったのは大阪だった。フィニッシュが決まらず互いに重い展開が続いたが、オン・ザ・コート「2」の大阪は途中出場のリチャード・ロビーが積極的にリングにアタックし、第1クォーターだけで10得点を挙げる活躍を見せる。守備でも積極的なヘルプディフェンスで田中大貴から3つのターンオーバーを誘い、23-12とまずは抜け出した。
大阪はオン・ザ・コート数が逆転した第2クォーターでも流れを渡さない。スクリーンに対してスイッチとファイトオーバー(マークマンにそのままついていく)を併用しズレを作らせず、インサイドにはダブルチームで対処した。根来新之助がオフェンスリバウンドを4つもぎ取るなどインサイドの不利を感じさせなかった。
それでもA東京は残り1分を切り、ジェフ・エアーズが田中とのピック&ポップから3ポイントシュートを決めて、最後のポゼッションでは田中が1対1から華麗なステップで3ポイントシュートを沈め1点差まで猛追した。
息詰まる接戦の中、6点を生み出した菊池のビッグプレー
後半もA東京の勢いは止まらず、エアーズのフリースローで早々に逆転し、その後もエアーズが3ポイントシュート2本を含む10得点の荒稼ぎでリードを広げていった。
だが大阪はここで粘りを見せる。フィニッシュが決まらない分を気迫のこもったディフェンスで帳消しにし、ポジションにかかわらず全員がリバウンドに飛び込んだ。今野翔太のオフェンスリバウンドから相馬卓弥の3ポイントシュートでつなぎ、エグゼビア・ギブソンがインサイドで得点を重ね、51-52と1点差に迫って最終クォーターを迎えた。
互いに持てる力を出し合い、リードチェンジを繰りしながら時計は進んでいく。残り2分強、A東京が1点ビハインドの場面で試合を左右するプレーが生まれる。ボールがコート外に出そうなロングリバウンドを菊地祥平がギリギリのところで残すと、そのボールを自らキャッチしリングへアタック。ジョシュ・ハレルソンのファウルを受けながらレイアップを沈め逆転のバスケット・カウントをもぎ取った。
さらに勝利への執念が違う方向に出たハレルソンがテクニカルファウルをコールされ、1本のフリースローとポゼッションを得る。このポゼッションで田中が2本のフリースローを決めて、菊池のワンプレーから一気に6点が生まれ、大阪を突き放す。
その後も最後まで全力プレーを続ける大阪はハレルソンとギブソンが3ポイントシュートをねじ込むも、あと一歩及ばず。最終スコア70-71で惜敗となった。
敗戦にも善戦を誇る大阪「存在意義を見せてくれた」
アルバルク東京の伊藤拓摩ヘッドコーチは「大阪のディフェンスがオーバーヘルプしてくるのでなるべくボールを止めないようにしましたが、結果的に重たくなってしまいました」とオフェンスが停滞したことを認めた。エアーズとトレント・プレイステッドの同時起用も効果が薄く、やはりギャレットが抜けるとオフェンス面での穴は深刻。左手首の捻挫で2週間程度の離脱と発表されているが、その間は苦しい戦いを強いられることになるだろう。
ただ伊藤ヘッドコーチは「言い訳ではなく前向きな意味で、練習しないと勝てないチーム」と言うように、変則開催からくる練習期間の短さがこの苦戦を招いたと語った。
一方、大阪の桶谷コーチは「タレントの揃ったチームを相手にこれだけ緊迫した試合ができ、自分たちの存在意義をしっかり見せてくれた」と戦いぶりを誇った。
「タフな状況の中、40分間あきらめずにしっかりボールを追いかけてルーズボールを拾う。自分よりも身長が高い相手に対しファイトして簡単にレイアップに持って行かせない。そういうプレーを見せてくれた」と全力プレーを貫いた選手たちを労った。
それでも、大健闘しただけに大阪にとっては勝ちたかった試合だった。この1敗によりワイルドカード争いは2位から5位までのチームが2ゲーム差以内という大混戦に。A東京は今日の勝利で首位を走る栃木に対し0.5ゲーム差と肉薄し、明日の結果次第で再び東地区首位に躍り出ることとなる。
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