ボバン・マリアノビッチ

「何が起ころうとも人生のあらゆる出来事を楽しむ」

ボバン・マリヤノビッチはフリーエージェントのままオフを過ごしているが、焦りも動揺もない。次の契約を得られればNBAで10シーズン目。セルビアで3年連続MVPを受賞して、アメリカへと渡ってスパーズに加入したのは2015年、27歳になった夏のこと。それから6チームを渡り歩く中で、221cmの高さで存在感は見せても、チーム内で大きな役割を任されたことはない。

最も多くの出場をしたのはNBAデビューシーズンのスパーズでの54試合。最も多くの先発を経験したのはNBA4年目のクリッパーズで9試合だが、このシーズンも36試合に出場したところでトレードされている。NBAのバスケがスピードと3ポイントシュートへと急速にシフトする中、古典的なビッグマンでしかないマリヤノビッチの役割は限られたものになった。

それでも彼は、途切れることなくNBAでのキャリアを重ねている。これまで得た最大の契約は2016年にピストンズと結んだ3年2100万ドル(約32億円)で、その後は次第に下がってロケッツでのここ2年はベテラン最低保証額。高給を得ているわけではないが、NBAでキャリアを重ねることに意欲を抱いている。

ゴラン・ドラギッチの引退試合に参加したマリヤノビッチは「計画を立てたところで、その通りにはいかないものさ。計画は常に変更を余儀なくされる。今日だって飛行機で来るつもりだったけど、車で来たからね」とジョークを交えて自身の去就について語った。

「計画は立てず、何が起ころうとも人生のあらゆる出来事を楽しむつもりだ。NBAのチームからオファーが来るのを待っているけど、そうじゃなければ別のことをやるだけだよ」

古いタイプのビッグマンではあるが、これまでそうだったように30チームのどこかにそのニーズが出てきて、自分に白羽の矢が立つことを彼は期待している。36歳になった彼が今からどこかの主力として活躍することはないだろうが、直近の2シーズンを過ごしたロケッツでそうだったように、2年で45試合、計242分のプレータイムしか得られなくても、彼のリムプロテクト能力、そして常にポジティブでチームファーストな姿勢や若い選手の模範となるバスケへの取り組み方は一定の評価を得てきた。

だから彼には焦りも動揺もない。彼は落ち着いた表情でこう話した。「計画を立てず、前に進むんだ」