取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

『トヨタ、やるじゃないか!』という感覚

昨日行われたWリーグのプレーオフ・ファイナル第1戦は、8連覇中の『女王』JX-ENEOSサンフラワーズが先勝した。84-53と31点差のスコアを見れば『大勝』だが、第3クォーター途中まで3点差と食い下がったトヨタ自動車アンテロープスの健闘が光る試合でもあった。

トヨタをポイントガードとして引っ張る大神雄子は試合後の会見で「正直、会場やテレビで試合を見ていただいた皆さんは『トヨタ、やるじゃないか!』という感覚だったんじゃないかと思います。それを誰よりも自分たちが感じた試合でした」と語り、敗戦にも下を向くことがなかった。

JX-ENEOSについて大神は「オフェンスもディフェンスもグレートなチーム」と評する。その上で「すべてにおいてこちらもグレートじゃないと立ち向かえない。そういった意味では、この試合は前半が良かったと言うよりは、後半にそれを繋ぐことが大事でした」と試合を振り返る。

前半だけグレートでは勝てない。健闘するだけでなく勝つためには、40分間を通して完璧な試合をする必要があるということだ。それにも大神は自信を持っている。「いくらでも修正できるし、それは前半で証明できたと思います。すべてにおいてグレートじゃないと立ち向かえないのが楽しいというのもあります」

大神は19分の出場で7得点4アシスト。数字としては突出したものではないが、激しいディフェンスの起点となり、チームを奮い立たせる存在感ははっきりと示していた。

今日で最後じゃない、チャンスをもらっている

2013年にJX-ENEOSを離れて以来となるファイナルの舞台に、大神は燃えている。「チャンピオンシップでプレーしたいのはみんな同じです。だからキツい練習もやるし、私もその一人です。相手は8連覇中で、そのうちの4つか5つかは自分もファイナルで戦ってきました。今ここでトヨタ自動車アンテロープスの選手として、今のチームメートと一緒に、かつてチームメートだった選手と試合ができるのをとてもうれしく思っています」

昨シーズンの5位から2位へとステップアップし、プレーオフも準々決勝、決勝とも3戦目までもつれる混戦を勝ち上がってきたトヨタ。単純な力量を比較すればJX-ENEOSの優位は否めないが、トヨタには激戦をくぐり抜けた勝負根性と抜け目のなさ、そして勢いがある。チームとしての結束の強さは、試合中の何気ないシーンからも明らかに感じさせる。

「今日で最後じゃないし、2戦目3戦目と自分たちのバスケを40分間やり通すチャンスをもらっているので。ベックコーチを信じて、明日また準備したいと思います」と大神は力強く語った。

かつて所属した『女王』への思いは様々あるだろうが、「ファイナルになれば敵なので」と切り替えている。「今はベックさんが率いるこのチームで、JXにしっかりと立ち向かう勇気は持っているので、あとは立ち向かうだけです」

もう何年もJX-ENEOSが強さばかりが印象に残るWリーグだが、トヨタと大神のおかげで、今回のファイナルは最後までワクワクさせられる展開が期待できそうだ。