指揮官ウィル・ハーディーとはスパーズで一緒だった仲
いまだ正式発表にはなっていないが、ジャズはパティ・ミルズとの1年契約に合意した。今オフの最重要課題であるラウリ・マルカネンの契約延長を済ませた後、ジャズは駆け足で残りのロスターを完成させた。フリーエージェントのドリュー・ユーバンクスとスビ・ミハイリュク、若手のオスカー・シブエとジョニー・ジューザン、2巡目33位で指名していたカイル・フィリパウスキー、そして大ベテランのミルズがチームに加わっている。
ミルズは10シーズンを過ごしたスパーズで充実したキャリアを築いた後、ネッツでは良い活躍を見せたものの、昨シーズンはホークスとヒートでほとんど目立たない1年を過ごした。運動能力とフィジカルが信奉されるNBAで、36歳になった小兵ガードが評価を勝ち取るのは簡単ではない。それでもスキルは年齢による衰えとほぼ無関係で、リーダーシップは年齢とともに向上するもの。パリオリンピックではオーストラリア代表のリーダーとして平均30.9分出場し、16.5得点を記録して健在ぶりをアピールしている。
ジャズは昨シーズン途中にもミルズの獲得に動いていた。あくまでベテラン最低保証額、役割も主力ではなく控えだが、ジャズを率いるウィル・ハーディーは長くスパーズでアシスタントコーチを務めており、身体能力のハンデをカバーしてNBAで長いキャリアを築くにいたったミルズのバスケに対する真摯な取り組み方、プロフェッショナル精神をリスペクトしている。
ジャズはマルカネンとの契約を延長したものの、クーパー・フラッグを始めタレントが豊作と言われる来年のドラフトで高い順位の指名権を手に入れるため、このシーズンは勝ちに行かないものと思われる。ジャズは年齢的にミルズの下は32歳のジョーダン・クラークソン、あとは全員が27歳以下で、チームの半数が23歳以下という極端に若いチーム。だからこそ、勝利のプレッシャーがない状況でも若手が成長のための努力を続ける環境はとても大切なものになる。
ジャズの若手たちは今は安泰かもしれないが、チームが1年後もしくは2年後に再建期を脱した時点で一定のレベルに成長していなければ行き場を失う。それは彼ら自身だけでなくジャズにとっても大きな損失だ。自前で育てられるタレントは一人でも多いほうがいい。ミルズの獲得はその成功の確率を高める一手となる。ミルズは若手の指南役だけに満足せず、コート上で結果を出すために努力を重ねるだろうが、その姿勢がまた若手に良い影響を与えるはずだ。