綿貫瞬

文=丸山素行 写真=宮原和也

伊藤の欠場を受け、チームのためにと強行出場

3月23日、サンロッカーズ渋谷をホームに迎えた京都ハンナリーズは、ハイスコアリングゲームの末、93-97の接戦を落とした。SR渋谷ではロバート・サクレがほぼ出ずっぱりの39分出場、キャリアハイの44得点13リバウンドで勝利に貢献。伊佐勉ヘッドコーチは「サクレが中心になってゲームを引っ張ってくれた。44点も素晴らしいですが、リーダーシップが良かった」と称賛した。

それでも京都の浜口炎ヘッドコーチは、「サクレ選手が44点取ってますけど、それよりもファストブレイクの13点とワイドオープンの3ポイントがこのゲームを分けてしまった。そこがもったいなかった」と、第3クォーターに広瀬健太を中心とする速攻を浴びて最大17点のリードを許した部分を敗因に挙げた。

この試合、京都は前節の栃木ブレックス戦で頭部を強打した伊藤達哉が大事を取り出場せず、片岡大晴が今シーズン初めて先発に名を連ねた。通常であれば、同じポイントガードの綿貫瞬が先発するはずだが、抱えていた手首のケガに加えて栃木戦でアキレス腱を痛めており、純粋なポイントガードなしのラインナップを余儀なくされた。

それでも綿貫は、第3クォーター終盤に4連続得点を挙げて追い上げムードを演出するなど、少ないチャンスをモノにし、8得点3アシストと効果的なプレーをした。だが綿貫は、最終クォーター残り7分に交代を告げられると、その後再びコートに立つことはなかった。

綿貫瞬

浜口ヘッドコーチ「無理に出てもらった」

ボールを散らし、自ら仕掛けてミドルシュートを打てる綿貫は京都にとって必要だったはず。だが、「アキレス腱がパンパンに腫れちゃってて、足が限界でしたね」と、綿貫の身体はすでに悲鳴を上げていた。

また、足だけでなく、手首の痛みも綿貫を苦しめ、交代する直前にノーマークで放った3ポイントシュートがショートした。「手のひらに感覚がなくて、届かなかったです」と綿貫は明かす。フリースローを2投成功させ、ジャンプシュートも決めるなど、端から見ればそこまでのケガを抱えているようには見えなかった。「跳んで距離を稼いで、フローターみたいな感じで。ほとんど手首を使ってないんです」という言葉に驚かされた。

浜口ヘッドコーチも、もちろん綿貫の状態を理解している。「実は3ポイントが届かないんですよね。今週一回もチーム練習に入ってない状況で、無理に出てもらったという表現が合ってるような気がします」

綿貫は3ポイントシュートを外した直後に交代を告げられた。届かないと分かっているのであれば、打たなければいいのだが、ジュリアン・マブンガにマークが寄り、ワイドオープンになった流れを壊すことはできず、「チームショットなので、エアボールになってでも打ちきらなきゃいけない場面でした」と、綿貫はその時を振り返った。

綿貫瞬

「チームに足りない部分を僕が補っていきたい」

綿貫はすでに満身創痍。今後のキャリアを考えても、今の状態で試合に出続けるよりはケガの治療を優先したほうがいい。だが、京都は西地区2位でチャンピオンシップ進出圏内をキープしているが、名古屋ダイヤモンドドルフィンズに2ゲーム差に迫られ、負けられない状況が続く。彼自身は「必要とされるのであれば僕は出たい」と、チームのために身を捧げる覚悟だ。

さらには「試合を通じて、チームに足りない部分を僕が補っていきたい」と言う。「ボールを触っていない人に触らしてあげたり、リバウンドが苦しい時はリバウンドに行く、前から当たる。数字に表れない部分ばかりですけど、そういうことを率先してやっていきたい」

京都はマブンガがボールハンドラーとなり、デイヴィッド・サイモンとのコンビプレーを強調することで、西地区2位をキープしている。そのため、周りの選手は通常のチームよりもボールに触れる機会が少ない。だからこそ、綿貫がボールを散らすことはシューター陣のパフォーマンスを上げるためにも価値がある。満身創痍ながらもチームのために、今日も綿貫は戦い続ける。