「チームとしてまとまり、勝利の文化を築いた」
パリオリンピックでのアメリカ代表は、他国を寄せ付けない圧倒的な強さを発揮した。そのアメリカを最も苦しめたのは、決勝で対戦したフランスよりも、準決勝の相手だったセルビアだろう。ニコラ・ヨキッチを中心とする美しいチームバスケットは、アメリカの個人能力偏重のバスケを40分間のかなりの時間帯で上回っていた。
昨年のワールドカップでは準優勝。ヨキッチが加わったにもかかわらず3位に終わったのは『後退』とも受け止められるが、選手たちは悔しさとともに大きな充足感を得ている。取材嫌いで、インタビューが義務のNBAでもジョークと皮肉しか言わないヨキッチは、オリンピックが終わってもメディアに何も語らなかった。彼に代わってセルビア代表を代表して会見に応じたのは、ボグダン・ボグダノビッチだ。
今大会ではヨキッチがセルビアのチーム得点王であり、リバウンド王であり、アシスト王となったが、昨年のワールドカップではボグダノビッチがチーム最多の19.1得点でオフェンスを牽引していた。パリオリンピックでも18.3得点と、ヨキッチが加わってもなおボグダノビッチは堅実に得点を積み重ねており、チームへの貢献度は相変わらず高いままだった。
「アメリカに負けた悔しさはまだ残っている。だけど、後ろを振り返っていても意味はない。朝7時に起きて11時から3位決定戦を戦うのは難しかったけど、僕らはやり遂げた。僕はこのチームのみんなを誇りに思う。オリンピックでの銅メダル獲得は大きな成功だ」とボグダノビッチは言う。
アメリカとの試合に敗れた夜はほとんど眠れなかったそうだ。「でも朝になって部屋を出ると、もうコーチがミーティングの準備をしていた。この1年間やってきたのと変わりなく、でもいつもより少しだけ長いミーティングをした。優勝の可能性が消えても僕らはコーチを信頼し続けていたし、誰も投げ出さなかった。銅メダルを獲得するのは銀メダルを獲得するよりずっと難しいと思う。でも僕らはやり遂げた。3位決定戦だけじゃなく、大会全体を通した自分たちの戦いを誇らしく思うよ」
「結果は必ずしも僕たちの努力を正しく反映するわけじゃない。僕たちはこの大会でチームとしてまとまり、勝利の文化を築いた。だからつらい気持ちで大会を終えないようにしたい。自分たちの戦いぶりを誇らしく思うよ」
ボグダノビッチは31歳で、ヨキッチが29歳。バシリエ・ミチッチが30歳でアレクサ・アブラモビッチが29歳。フィリップ・ペトルセフは24歳。アベンジャーズのあの顔触れが揃うのは最初で最後で、ベテランたちは今回が最後の代表でのプレーになるだろうが、セルビアにはまだ時間が残されている。彼らが築いた『勝利の文化』は、もう少し後に大輪の花を咲かせるかもしれない。