「ディフェンスで強い気持ちで戦えていたら勝てた」
インターハイ決勝、岐阜女子は序盤から京都精華学園に押されて劣勢となった。センターのディヤイ・ネイがゴール下での攻防でユサフ・ボランレ・アイシャットの力強さ、プレーの引き出しの多さに勝てず、ポストアップからの攻めを組み立てられない。22-32で前半を折り返し、後半に入ってもオフェンスで打開する手を見いだせないまま、第3クォーター残り7分でファウルトラブルとなったネイをベンチに下げざるを得なくなった。
絶体絶命のピンチだったが、留学生プレーヤー抜きで全員が走れるラインナップになったことでボールが動き出す。オールコートでプレスを掛けて相手にプレー選択の余裕を与えず、高さを使おうとユサフのポストに入れるパスを狙い撃っての速攻を連発。リズムに乗ったことでこれまで決まらなかった3ポイントシュートも決まり始める。
9点差で迎えた第4クォーターにはネイをコートに戻すが、それでも走る意識は保ったままプレッシャーをかけて苦し紛れのパスを奪って走る。残り5分で追い付き、以後はリードチェンジを繰り返す展開へと持ち込んだ。
ネイがファウルトラブルになった時点でも焦りはなかったと安江満夫ヘッドコーチは言う。「留学生はウチの攻撃オプションの一つぐらい。これまでも大事な場面では平面のバスケで戦うことが多く、二段構えのオフェンスと考えていました」
それだけに、後半から攻守のシステムを一変させて試合の流れを持っていったのは『プラン通り』。ただし、走る展開で京都精華学園を圧倒している時間帯にも、勢いがある分だけ精度を欠いてシュートを落としたり、プレー選択のミスがあったりと、もったいないシーンが見られた。そして最後は、あと1本を決められなかった岐阜女子と、決めた京都精華学園の差でタイトルの行方が決まった。
「こちらはイージーミスが多くて、『勝つには早いぞ』ということ。勝負どころで京都精華学園の選手たちには決めきる力があり、ウチは決めきれなかった。それが分かれ目だろうと思います」と語る安江コーチは、もう今後に意識を向けている。
「現時点でのウイークポイントはだいたい分かっています。分かっていても今日明日で直せるものではありませんが、ウインターカップまで時間があるから、もう一回しっかりと。使える選手はいろいろいますが、使い切るまでの信頼ができていない。一昨年、去年もそうだったのですが、トップリーグで選手たちがすごく伸びてくれました。トップリーグでもっと経験をさせていきたい」
「1点負けた悔しさを次の努力の糧にするのも大事」
今回のインターハイではまだほとんど使えなかった1年生の留学生プレーヤー、ゲイ・ソハナがそうであり、主力としてチームを引っ張った2年生コンビ、杉浦結菜と三宅香菜にも言える。下級生が多いだけに伸びしろは多い。
杉浦は女子U17日本代表の一員としてU17ワールドカップを戦い、岐阜女子に戻ってもオフェンスを引っ張る活躍を見せた。「序盤から岐阜女子のバスケをして、ディフェンスで強い気持ちで戦えていたら勝てたと思います」と杉浦は語る。
「前半には焦りもあったんですけど、絶対に勝つという気持ちはずっと持っていました。それで相手を追い詰められたのは自信になります。でも負けてしまった以上は前向きな気持ちになれず、悔しい気持ちばかりなんですけど、負けたという結果はもう変えられないので切り替えます。今回の戦いをトップリーグとウインターカップに繋げて、次は日本一になれるよう頑張ります」
安江コーチも悔しいに違いないが、穏やかな笑みとともに「1点勝って喜ぶのも大事ですが、1点負けた悔しさを次の努力の糧にするのも大事なんです」と話す。
岐阜女子はインターハイ決勝に進出したのが7度目。そのうち優勝は1回のみ。ウインターカップでも7度の決勝を戦って優勝は2回と悔しい思いを何度も味わっている。しかし、安江コーチが率いる岐阜女子は粘り強い。跳ね返されても立ち上がり、努力を続けた先に最高の結果が待っていることを知っている。