「決めきるところで決められたのは良かった」
福岡インターハイの女子ファイナルは、残り41秒にユサフ・ボランレ・アイシャットがゴール下を決めて56-55と逆転した京都精華学園が、残りの時間を逃げ切って勝利を収めた。それでも立ち上がりからユサフが岐阜女子のディヤイ・ネイとの『留学生対決』で上回り、第3クォーター途中には、京都精華学園が余裕の展開を作り上げていた。
ユサフに阻まれてペイントエリアから押し出されてしまうネイは押し返そうと奮闘するも、それが強引なプレーと見なされ、第3クォーター残り7分半で個人4つ目のファウルをコールされてベンチに退くことに。この時点で41-24と京都精華学園が17点リード。留学生がいても良いオフェンスを組み立てられなかった岐阜女子にとっては痛恨のファウルトラブルかと思われた。
しかし、ここで岐阜女子は『平面のバスケ』で猛反撃を開始する。前からプレッシャーをかけ、ユサフに入れるパスを狙ってスティールし、そのままの勢いでファストブレイクを仕掛ける。これに京都精華学園は慌ててしまい、第4クォーターには逆転を許し、終盤はリードチェンジを繰り返す展開となった。
「やっぱり去年のチームに比べると度胸がない」と山本綱義ヘッドコーチが語る中で、「林は度胸が据わっています」と言う林咲良は、岐阜女子の勢いに飲み込まれて大量リードを溶かす中でも、やはり度胸が据わっていた。
林はこう語る。「タイムアウトの時に、『ディフェンスから』、『逃げたプレーをしない』、『落ち着く』と全員で確認しました。速攻からやられてしまって逆転を許しても、1本しっかり取れば落ち着ける。セットを組んで、そこを決めきれたのが良かったと思います」
「これをみんなで自信に変えて、またイチから練習を」
「去年はWリーグにいった3人(堀内桜花、八木悠香、ディマロ・ジェシカ)が中心でしたが、今年は全員が戦わなければ厳しい展開になると分かっていました。下級生も学年に関係なく試合に絡んできていますが、最終的には自分たち最上級生がチームを引っ張ることを意識していました」と林は言う。
「自分が気を抜いたプレーをしたので第3クォーター、第4クォーターは厳しい展開になったと思います」と言いながらも「課題はありますが3ポイントシュートを決めきるところで決められたのは良かったです」と続ける。
ギリギリのところまで追い詰められたが、そこから踏ん張り、逆に押し返して勝ち切った。「先輩たちが成し遂げてきた日本一を自分たちも取れたのは自信に繋がります。これをみんなで自信に変えて、またイチから練習をやっていきたいです」
山本ヘッドコーチは「まだまだこれからのチーム」と謙虚に話す。「堀内や八木のバスケにあこがれて入学してきてくれた生徒なので、ウチの良さを生かしたバスケットをこれから完成させたい。1、2年生はまだこれからが楽しみなので、また見てやってください」
優勝してもなお、チームには大きな伸びしろがある。期せずして『追われる立場』となった京都精華学園は、トップの地位を守るために、その伸びしろをしっかりと埋めていくつもりだ。