「シュートが外れることでイライラしたりはしない」
川崎ブレイブサンダースと新潟アルビレックスBB。先週末に行われた中地区首位攻防戦は1勝1敗で、決着は次節以降に持ち越された。首位の新潟を3ゲーム差で追う川崎にとっては、土曜の第1戦を落とした後の第2戦を勝って安堵したというのが本音だろう。チームはまだ課題を抱えているし、直接対決はまだ3つ残されている。連敗だけは避けなければいけない状況だった。
いつも強気なニック・ファジーカスも「少しホッとしたよ」と本音を漏らす。「もちろん連勝を狙っていたけど、中地区で勝つにはエナジーが必要だ。今日はそれを出すことができた」
ニック自身も第1戦では17得点と不調。第2戦では32得点で勝利に貢献したが、本人の感触としてはあまり良くない。「原因は分からないけど、昨日はイージーなシュートを外してしまった。今日も不調は続いていて、そこを決めていれば40点は取れたはずだ。もしかしたら過密スケジュールとシーズン終盤の疲れが合わさった結果かもしれない。ただ、こういうことは時には起こるもので、いつも決まるシュートが外れることでイライラしたりはしない。常に練習はしっかりやっているし、『次は決めよう』という思いがあるだけさ」
川崎にとってシーズン終盤の、そしてチャンピオンシップを勝ち抜くための大きな課題は、ファジーカスと外国籍選手(バーノン・マクリンとシェーン・エドワーズ)を同時起用するオン・ザ・コート3をいかに機能させるか。強力であることは間違いないが、レギュラーシーズン残り17試合になった今も連携は未成熟なまま。北卓也ヘッドコーチにとっても悩みどころとなっているが、ファジーカス自身はこの『オン3』が強力な武器になると確信している。
「今日はファウルトラブルもあって使わなかったと思うけど、『オン3』は川崎のベストラインナップになり得る。使っていくことで良くなっていくし、あとは経験を重ねていくだけ。大きなアドバンテージになるはずだから、使っていくべきだよ。ただ、レギュラーシーズンはあと1カ月ちょっとしかない。緊張感を持って取り組む必要がある。『オン3』を活用することで優勝の可能性がより高まると思っているよ」
「僕は日本が良いチームだと自信を持っている」
昨年春に日本代表に加わり、ワールドカップ予選を勝ち抜く原動力になったファジーカスにとっては、この夏のワールドカップも大きな関心事。週末に行われた1次グループの抽選会は川崎のチームメートと一緒に見ていたそうだ。トルコ、チェコ、アメリカとの対戦。やはり母国アメリカとの対戦はファジーカスを高ぶらせるものがある。「アメリカとやるのはエキサイティングだね。(篠山)竜青、辻(直人)、ハセ(長谷川技)、(藤井)祐眞と一緒に抽選会は見ていた。すぐにフリオ・ラマスにメールを送ったよ」
「アメリカは無敵のチームだ。僕たちはトルコとチェコに勝ちに行かなければいけない。チェコにはトマシュ・サトランスキがいて、トルコにも知っている選手が何人かいた。もちろん、チャンスはあると見ているよ」
13年ぶりの出場となる日本にとっては、すべてのチームが格上となる。ファジーカスはそれを理解しつつも、負けるつもりで大会に臨みはしない。「僕たちはアンダードッグと見られるだろうけど、それはアジア予選でのイラン戦、オーストラリア戦の前も同じだったはずだ。日本はずっとアンダードッグだろう。世界の舞台から遠ざかっていたわけだから、日本が注目されないとしても仕方ない。でも、僕は日本が良いチームだと自信を持っているし、自信を持つべきだ」
「スポットライトを浴びるのが楽しみ」
「出場するだけじゃなく16強入りを目指す。僕らのグループは上海で開催だ。大都市かつアメリカがいるから、メディアもたくさん集まって他のグループよりも注目される。スポットライトを浴びるのが楽しみだし、そこで注目されるプレーを見せたい。まずは初戦のトルコに集中したい」
振り返れば、2016年のリオ五輪では、女子日本代表がグループリーグを突破して、決勝トーナメント初戦でアメリカと対戦した。結果は大敗だったが、少なくとも前半は『日本のバスケ』で食らい付き、その健闘ぶりが世界に衝撃を与えた。同じようなパフォーマンスを、男子日本代表にも期待したい。ファジーカスはその得点能力もさることながら、勝利を信じて疑わない強靭なメンタリティをチームに植え付けることに期待したい。