文=丸山素行 写真=FIBA.com

「まずはディフェンス、そしてブレイクで走ること」

2月24日から27日の4日間、U-19男子日本代表の第5次合宿が行われた。3泊4日の濃密な時間を過ごし、充実した表情を見せる増田啓介に話を聞いた。

増田は191cmのパワーフォワードで、福岡大学附属大濠から筑波大へと進んだ。その大濠では1年生からウインターカップに出場し、主力として活躍。ビッグマンに外角のシュート力とスピードを求める大濠のスタイルが、現在の増田の基礎となっている。

増田は座右の銘に『思考は現実化する』という言葉を選んでいる。これは大濠の恩師である片峯聡太監督の言葉を拝借したものだ。

昨年7月末にテヘラン(イラン)で行われたU-18アジア選手権で、日本は準優勝の好成績を収め、今年のワールドカップへの切符を手にした。ここで攻守に大活躍したのが増田である。現在の大学1年生だと早生まれの選手だけが、このチームへの参加を認められる。1998年1月22日生まれの増田もその一人。迫力あるドライブと正確なシュートタッチで平均15.9得点を記録。フィジカルや高さで劣るチームにおいて身体を張ったディフェンスやリバウンドでも貢献した。

U-19代表でもまず意識するのはディフェンスとリバウンドだ。「まずはディフェンス、そしてリバウンドやディフェンスからのブレイクで走ることを求められています。あとは自分はジャンプシュートを得意としているので、フリーになったら積極的に決めていきたい」増田は言う。

アウトサイドシュート中心のチームにとって増田のような攻撃的な動きは、ディフェンスを収縮させるために重要となる。「3ポイントを主体としているチームなので自分も攻めつつ、外が空いたらパスをさばくということを心掛けています」

「背伸びすることなく、できることをしっかり出して」

ワールドカップへ向けた調整を進めるU-19には新たなメンバーも加わり、現在は全員があらためてチーム内競争に身を置いている。アジア選手権の準決勝で29得点、決勝で35得点と2試合連続のゲームハイを叩き出した増田も例外ではなく、アピールしなければならないと言う。

「控えめになってしまったらダメなので、ディフェンスの時に声を出してチームを盛り上げます。背伸びすることなく、自分ができることをしっかり出してアピールしていきたいです」

また、プレーの幅を広げる意味で、これまでは滅多に打たなかった3ポイントシュートを練習しているそうだ。「まだ発展途上なんですけど、これから使っていきたい」

日本は世界を相手に戦うとなると、どうしても高さの不利は否めない。ほとんどの試合で、まずはインサイドのディフェンスで食い止めることが勝利の『前提条件』となる。もちろん増田もそれは理解しており、合宿でもハーフコートの5対5やスクリメージ(実戦形式の試合)ではペイントエリアで激しい攻防を自ら仕掛けていた。

「外国はインサイドが強いので、ペイントエリアでボールを持たせてしまったら、簡単にシュートを入れられてしまいます。まずは簡単にボールを入れさせず、身体を当ててペイントエリアから押し出すように意識してます」

「筑波は楽しみながら、しっかりポイントを押さえてやる」

もっとも、大事な動きの確認やスクリメージなどは真剣な面持ちで取り組むも、ヘッドコーチのトーステン・ロイブルが作り出す柔和な雰囲気にも後押しされ、選手たちは笑顔を交え、終始リラックスムードで練習を行っていた。その中でも特に印象的だったのが増田の笑顔だ。

「高校では練習中に笑うことはあまりなかったですが、筑波は楽しみながら、しっかりポイントを押さえてやるので、そのスタイルが出ていたんだと思います」

最近は練習後にチームメートと好物の『つけ麺」を食べに行くのが一番のリフレッシュ法と語る。日本代表選手と言ってもそこは普通の大学生と変わらない。

「大濠の時は寮生活だったので、夜は外出できませんでした。大学生から一人暮らしになり、生活の幅は広がりました。今は頑張って自炊したり外食したりしています。体重を増やさないといけないのですが、なかなか難しいですね」

インタビューにも終始笑顔で応じてくれた増田だが、「代表に生き残る自信は?」と直球をぶつけると「あります。全力を尽くして残りたいです」と力強く語ってくれた。自身の掲げる座右の銘のように、まずは代表でのチーム内競争を勝ち抜き、世界の舞台でその能力を存分に発揮してもらいたいものだ。