文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

足を動かすディフェンスで仙台が川崎の攻めをしのぐ

11勝28敗で東地区5位の仙台89ERSが33勝6敗でリーグ最高勝率の川崎ブレイブサンダーズをホームに迎えた。戦績だけを見れば両チームの力の差は明らかだったが、仙台の奮闘により延長にもつれる大接戦となった。

仙台は序盤からガード陣が積極的にリングにアタックし的を絞らせず、チリジ・ネパウエがインサイドで力を発揮して主導権を握った。特に石川海斗が3ポイントシュート2本を含む8得点を第1クォーターで挙げ、チームの土台を作った。ディフェンスでも足を動かしてイージーシュートを打たせず、ヘルプディフェンスも機能し川崎の攻めをしのいでいく。

川崎は野本建吾が高さのミスマッチを突いてインサイドで得点するも、仙台の粘り強いディフェンスの前にオフェンスが単調になって苦戦を強いられる。ウェンデル・ホワイトが前半終了間際に3ポイントシュートを沈め、40-38と仙台がリードして後半に突入した。

川崎は仙台のしつこいマークを受けながらも、リーグ得点王を独走するニック・ファジーカスがコンスタントに得点を重ねていく。ネパウエの好ブロックにあいながらも、不屈の精神でゴールを量産していった。

クラッチプレー連発の終盤、決着つかず延長戦へ

仙台の3点ビハインドで迎えた最終クォーター、残り9分から一度も連続でフィールドゴールを許すことのない、まさに一進一退の攻防となる。

残り1分16秒、仙台1点ビハインドの場面。篠山竜青のドライブに対し菊池真人がヘルプからボールをスティールし、前線に走る片岡大晴へパスを送る。片岡の速攻で仙台が逆転するかに思われたが、全速力で戻った藤井祐眞にここしかないというタイミングで後ろからレイアップをブロックされ、逆転の機会を逸する。

それでも仙台は残り時間16秒で3点のビハインドを背負った状態から、ジュフ磨々道のディフェンスをかいくぐったホワイトが強引に3ポイントシュートをねじ込み、土壇場で74-74と追い付いてチームを延長戦へと導いた。

延長に入ると、仙台はネパウエがインサイドで奮闘して一時リードを奪う。だが磨々道にインサイドを攻められ、ファジーカスに3ポイントシュート許し再逆転されてしまう。さらに永吉佑也に勝負どころでのオフェンスリバウンドを奪われ、ジャンプショットまで決められてしまい、残り30秒で3点差に。

ホワイトのシュートが外れ、ファウルゲームに持ち込むも藤井に4本のフリースローをすべて決められ、86-91で試合終了。川崎を追い詰めながらもアップセットとはならなかった。

ファジーカスは苦しみながらもゲームハイの34得点

勝利した川崎の北卓也ヘッドコーチは「最後、第4クォーターで勝てるチャンスがいくつかありましたが、勝負どころでターンオーバーを犯すと勝利をつかむのは難しい」と勝つことの難しさを痛感。それでも「第4クォーターのミスから切り替えて、粘って延長で勝てたことは非常に大きい」と、接戦で選手たちが見せた精神的な強さを強調した。

仙台のディフェンスに苦しんだ印象が強いものの、それでも終わってみればゲームハイの34得点を挙げたファジーカスは「タフな試合を勝てて良かった。外のシュートの感覚は良かったがリバウンドをもっと取りたかった」と、激闘を淡々と振り返る。

指揮官の言う「勝負どころでのターンオーバー」は篠山によるもの。それだけに「ポイントガードとしては反省点しかなかった試合」と篠山は語る。「延長に入る前に僕がミスをしてしまい、相手に粘られてしまいました。ピック&ロールも良いセレクションができていなかったので明日は修正したいです」

今シーズン最高とも呼ぶべきパフォーマンスを見せた仙台。ホワイトが25得点9リバウンド、ネパウエが20得点8リバウンドとスタッツは2人に集中したが、攻守ともにチームプレーが効いて川崎を苦しめた。それでも延長に入ると足が止まってしまい、ホワイトとネパウエ頼みに。揃って絶好調の2人にボールを集めても、周囲の足を使ったサポートがなくなりリズムを維持できなかった。

それでもリーグ首位の川崎を相手に仙台は底力を見せた。大活躍を見せたホワイトも「ファイトできて自信になったが、良い自信にするためにも勝つことが必要。個人、チームとも何を修正すべきかは分かっている」と良い感触を得ている。

このままでは全体15位で残留プレーオフに回る仙台だが、このパフォーマンスを続けることができれば降格の心配はいらなくなるはず。それだけに川崎がアジャストしてくるであろう今日の第2戦、ここでどれだけのパフォーマンスを見せられるかが重要となる。

第2戦はカメイアリーナで今日14時ティップオフ。