一撃必殺、ピックからの3ポイントシュート
3月13日、千葉ジェッツは敵地に乗り込み、アルバルク東京に76-62の完勝を収めた。第1クォーターを27-12と圧倒した立ち上がりのパフォーマンスが勝負を分けたが、このロケットスタートを牽引したのが石井講祐だ。
アレックス・カークのダンクで先制されるも、すぐさま石井の3ポイントシュートで逆転。そして、石井のスティールからマイケル・パーカーの速攻に繋ぎ、ギャビン・エドワーズの3ポイントシュートをアシストした。その石井は「出だしから全員で守って、速い展開だったり、ボールをみんなで回して点を取る、やりたいことができました。良い感触で勝てた試合でした」と、試合を振り返る。
3ポイントシュート成功率47.7%は現在リーグトップの数字。この試合でも4本中3本を成功させた。毎年40%前後の高い3ポイントシュート成功率を残す、安定感のあるシューターである。相手から警戒される中で、ここまで高い成功率を残せるのは、石井の進化によるものだ。
石井が「チャンスがあれば常に狙っている」と言うように、多くのシューターは『空いたら打つ』を徹底している。それは、オフボールでの動きや、味方のお膳立てがあった場合によるものが多い。だが石井は、自らスクリーンを呼んで、マークマンが一瞬離れた瞬間に3ポイントシュートを決められる、『移動型シューター』として大成しつつある。
「キャッチ&シュート以外の部分で、自分でクリエイトして3ポイントのチャンスを作るというのは、自分の伸びしろだと思っていました。今シーズンは特にいつものシーズンよりそういうシチュエーションを多く出せています」
石井をマークする相手は常に3ポイントシュートを警戒せざるを得ない。そのため石井のペイントアタックが決まりやすくなる。そこでペリメーターのシュートやドライブ、そこからのアシストなどプレーの引き出しを増やしたことで、千葉のオフェンス力はより強力になった。
トランジションの破壊力を強めるスティール
派手な3ポイントシュートに目が行きがちだが、1試合平均1.4スティールはリーグ7位の数字であり、千葉の堅守を支えるディフェンスでの貢献も見逃せない。
「スティールはギャンブル的な要素もあるので、速攻に繋がってしまう場面ももちろんある」とリスクもあるが、それでも「そういう駆け引き、行けそうだなっていう感覚は試合を重ねるごとに分かってきました。直観的なことが多いかな」と石井は言う。
実際この試合でも4スティールを記録。一時は10点差に迫られた第3クォーターには、速攻を狙うカークへのロングボールをパスカットして失点を防いだ。西村文男がボールをファンブルして相手の速攻になりかけた場面では、抜群の読みでパスコースに入ってボールに手を引っ掛け、ダイブしてマイボールに。これがパーカーのダンクに繋がった。
このようなプレーは『-2点』のシチュエーションを『+2点』に変える、4点分の価値がある。特にトランジションバスケを得意とする千葉にとっては、一つのスティールは得点に直結するし、チームを勢いに乗せるスイッチにもなる強力な武器だ。
石井はこうしたボールへの嗅覚が自身の調子の指標となっていると言う。「リズムに乗れている時はそういうのが分かる時が多いです。ボールの出どころだったり、行きそうな場所をある程度予測しながら入れたので、自分のリズムになっていました。こういうのは調子のバロメーターになっています」
石井が好調な時はまさに神出鬼没。注意しても止められないのがこのプレーヤーの恐ろしさだ。