川真田紘也

「(強化試合で出場した)3試合トータルでは自分の持ち味をアピールできた」

7月7日、バスケットボール男子日本代表は韓国代表とのパリ五輪前では国内最後の強化試合を88-80で制した。代表12名の当落線上にいる川真田紘也は最後のアピールチャンスで、存在感を発揮することに成功した。

この日の川真田は、フィジカルの強さを生かしたアグレッシブなプレーを攻守に渡って披露。積極的なアタックからダンクを叩き込むと、ディフェンスでは相手のレイアップをブロックして会場を沸かせた。

ジョシュ・ホーキンソンの控えセンターとして出場した川真田だが、ホーキンソンはシュートタッチが良く、34得点と絶好調だった。さらにトム・ホーバスヘッドコーチはいつものように勝ちにこだわった采配をしたことで、川真田のプレータイムは7分23秒に留まった。しかし、この限られた時間で7得点を挙げ、しっかりと爪痕を残している。

ただ、自身のパフォーマンスについては「7分半で長くはなかったですけど、もっとできることはたくさんあると思いました」と満足していない。それでも、五輪代表12名を決める前では最後の実戦を終えた今、自分の持っているモノを出し切れたという手応えもある。「(オーストラリアと2試合、韓国と2試合行った国内強化試合の内)自分は3試合に出ました。3試合トータルでは自分の持ち味をアピールできたと思っています。あとはもう、トムさんがどう判断するかというところです」

川真田の大きな魅力はコート内でのフィジカルなプレーに加え、チーム全体を盛り上げることのできるムードメーカーの才能も含まれる。試合中にはベンチから味方の好プレーを率先して盛り上げているが、そこには「代表は入りたくても入れない場所で、いろいろな選手が求めているところです。ここに来た以上は楽しみたい。本気でやりつつ楽しみたいです」という思いがある。

川真田紘也

主力ビッグマンを休ませる繋ぎの役割「選ばれればやりきる自信があります」

だからこそ、NBAで確固たる地位を築いているスーパースターの八村塁に対しても、これまで面識がなかったにも関わらず、積極的にコミュニケーションを取りにいった。「(八村)塁さんがすごい選手であることは分かっていますけど、もっとチーム一体となってワイワイできたらいいなと。僕が楽しむようにやっていたらみんなも勝手に楽しんでくれていますが、これからも計画してワイワイしていきたいです」

コミュ力お化けの川真田をもってしても、八村に最初に絡みに行く時は「あまりに未知数すぎてめっちゃ勇気がいりました」と明かしたが、徐々に打ち解けていると手応えもあるという。「(渡邊)雄太さんは僕の情報を前もって知ってくれていたので、行ったらすぐに『うぇーい』と反応してくれました。塁さんは前情報もなかったところから、一歩一歩近づけていると思います」

川真田が激しいメンバー争いを経験するのは昨年のワールドカップ2023に続いて2度目だ。「メンタル的には、前回と比べると、(ワールドカップの)代表選手になったことで、余裕ではないですが慣れはあります」と言う。八村が加入したことでビッグマンの枠は1つ減ったが、好敵手と切磋琢磨する気持ちで合宿を過ごしてきた。「僕のポジション争いのライバルは(渡邉)飛勇です。2人で協力して試合に勝つことはもちろんですが、彼が良いプレーをすれば、俺もやらないといけないという気持ちになります」

川真田が12名に選ばれた場合、彼に求められるのはインサイドの中心選手たちを休ませる繋ぎの役割だ。「そこは僕だけでなく、飛勇にも求められているモノでプライドを持ってやっています。いつでも準備はできていますし、選ばれればやりきる自信があります」と、力強く言い切った。

周知の事実だが、日本がパリ五輪で対戦する相手はすべてが格上となる。そこで波乱を起こすには、チーム一丸となる結束力の高さが必要不可欠だ。ビッグマンの控えかつムードメーカーとして、川真田だからこそ担える役割はある。ホーバスヘッドコーチがどんな判断を下すのか、注目が集まる。