統率の取れたオフェンスに『ねじ伏せる個人技』を補強
ブルズのデマー・デローザンが3年7600万ドル(約110億円)の契約を結んでのサイン&トレードでキングスに移籍する。スパーズも含めた3チーム間トレードとなり、キングスからはハリソン・バーンズがスパーズに、ブルズにはクリス・ドゥアルテと2巡目指名権2つが移る。
キングスは一昨シーズンに48勝を挙げて17年ぶりにプレーオフに進出した。しかし昨シーズンは2つ勝ち星を減らしただけで激戦の西カンファレンスの3位から9位まで順位を落とし、プレーイン・トーナメントで、ペリカンズに敗れてシーズンを終えている。
今オフは指揮官マイク・ブラウンと新契約を結び、マリーク・モンクの慰留にも成功。この2シーズンと同じ体制を維持し、スピーディーで3ポイントシュートを多用するスタイルを継続して上位を目指すが、西カンファレンスで抜け出すための補強を必要としていた。
ブルズはデローザンにザック・ラビーンとニコラ・ブーチェビッチを加えた『ビッグ3』が3シーズン連続で結果を出せず、岐路に立っていた。アレックス・カルーソの放出はブルズが再建へ向かうことを示唆しており、しかも3ポイントシュートのないジョシュ・ギディーはデローザンのアイソレーションと相性が良いとは言えず、デローザンの退団は既定路線だった。
キングスは攻守に統率がよく取れ、全員が連動する素早いオフェンスの完成度はかなり高いが、それが裏を返せば『教科書通り』のプレーに落ち着いてしまい、相手をねじ伏せる個人の能力を欠いていた。それを打破すべく補強に動いており、獲得候補としてはジャズのラウリ・マルカネン、ペリカンズのブランドン・イングラム、ウィザーズのカイル・クーズマの名前が挙がっていたが、その誰よりも実績のあるデローザンが市場に出てきたチャンスを逃さなかった。
デローザンは34歳と大ベテランの年齢だが、昨シーズンのプレータイム2988分はリーグトップの数字で、なおかつクラッチプレーヤー賞で次点と、まだまだトップレベルで戦える。リーグ屈指の実力者ではあるが、9年間プレーしたラプターズから放出された2018年以降、スパーズとブルズでタイトルを争う機会を得られずに過ごしてきた。
昨シーズンにプレーオフ進出を逃したキングスは優勝候補とは言えないが、新シーズンに大きな飛躍を遂げるポテンシャルを秘めている。サンダーやティンバーウルブズが躍進する一方で中堅チームに『地盤沈下』が見られる西カンファレンスで、デローザンを加えたキングスは新たな風を巻き起こしそうだ。