馬瓜エブリン

2日連続で1万人以上の観客「日本で、これだけたくさんの人の前でプレーできたことがうれしい」

7月6日、バスケットボール女子日本代表はパリ五輪前での国内ラストゲームでニュージーランド代表と強化試合を実施。125-57と圧勝した一昨日に続き、堅いディフェンスからのトランジションが光り92-50と快勝した。

ニュージーランドは実力的に格下であり、2試合続けての大勝という結果は大きな意味を持たない。しかし、大量リードを奪っても各選手が緊張感を保ち、高い遂行力を継続したことは大きな収穫と言えるだろう。

180cmのスモールセンターを務める馬瓜エブリンは、スピードのミスマッチを突いた切れ味鋭いドライブで得点を重ねると、平面での激しいプレッシャーによって高さの不利を感じさせないディフェンスを披露。20分半のプレータイムで13得点4リバウンド2スティールと攻守に渡って存在感を示した。

「まずは日本で、これだけたくさんの人の前でプレーできたことがうれしいです。会場でみんなに『エブリン!!』だったり、他の選手の名前を呼んでもらえるくらい注目度が上がったのは、女子バスケにとって大きな成長だと思います」

試合後のメディア対応において、まず馬瓜は2試合続けて1万人以上の観客が集まったことへの感謝を強調した。そして、「勝ち切ることは1つ大事ですし、シュートがちょっと入らないところはありましたが、感覚よく打てていたことも大事です。良い試合だったと思います」と、内容的にも手応えを得た試合だったと振り返った。

馬瓜にとってパリ五輪は東京五輪に続いて2度目のオリンピックとなる。東京五輪の時は、主に控えの3番を務め、平均12.3分の出場で5.8得点、1.2リバウンドと繋ぎの役割をこなして銀メダル獲得に貢献した。今回もベンチスタートが濃厚だが、ポジションは3番から5番へと変更に。そして2月のパリ五輪最終予選(OQT)で平均19.1分出場、14.0得点、3.0リバウンドが示すように、セカンドユニットの得点源としてより大きな役割を担って迎える五輪となる。

「東京(五輪)の時は年齢が下というところはありました」と、3年前は先輩たちについていく立場のエブリンだったが、現在は味方への鼓舞に象徴されるムードメーカーとしても大きな信頼を寄せられている。

また、「自分のアイデンティティが東京の時と大きく変わったかと言われたら、変わらないです」と語ったが、その一方でリーダーシップに対する強い想いを持っている。「プレー以外のところでも(自分の持ち味を)見せられるのが一つ、今回のオリンピックを前にした成長だと思います。そして、みんなを勇気づけられるプレーをしたいです」

馬瓜エブリン

「一つひとつ、いろいろな試練を乗り越えてきた過程を踏んでいるのが楽しいです」

東京五輪での銀メダルを大きな起爆剤に、女子バスケの注目度は急上昇した。エブリンを筆頭に選手の知名度も飛躍的に向上するなど、女子バスケの立ち位置は大きく変わった。パリ五輪で2大会連続のメダル獲得という快挙を成し遂げられれば、その地位をより確固たるものにできる。それだけに重圧を感じるのは当然なはずだが、エブリンにはここで結果を残せなかったら今の人気に悪影響が出るかもしれない、という不安はない

それは、女子バスケの魅力をすでに多くのファンが分かってくれているという信頼があるからだ。「女子のバスケの良さは、試合では一生懸命にプレーし、速い展開から3ポイントを高確率で決めること。練習から手を抜かずにやって、みんな底抜けに明るく、コミュニケーションをしっかり取れているというところを皆さんにしっかり届けられていると思います。自分たちはいつでもチャレンジャーということで怖さはないです」

エブリンは東京五輪後に『人生の夏休み』と評した1年間の休養を取るという、バスケ界では稀有な道のりを経て、再び五輪の舞台に立つ。ここで自身が活躍することで、キャリアの歩み方に新たな可能性を提示できる。そういった背景も含め、彼女への注目度はこれまで以上に上がっているが、この状況を楽しめる逞しさを持っている。そこには、これまで着実に自身の目指すゴールへと近づいてきた、地道な積み重ねが裏付けにある。

「東京五輪が終わり1年休んで、復帰してからここまで一つひとついろいろな試練を乗り越えてきた過程を踏んでいるのが楽しいです。自分の中で、これを乗り越えてきたから大丈夫というのを書き留めています。もちろんこの合宿中でも、乗り越えたことを一つひとつ数えています」

そして「(五輪の)プレッシャーを乗り越えられるのか楽しみです」と、五輪をさらなる自身のステップアップの場にしたいと締めくくった。今回のエブリンは出場選手の中で最も小さい部類のセンターとして大会に臨むが、同時に彼女以上に3ポイントシュートを積極的に打っていくセンターもおそらくいないだろう。『走り勝つシューター軍団』という女子代表のコンセプトを誰よりも体現する1人として、またシュートを決めた後の雄叫びなどチームにエナジーを注入するムードメーカーとして、エブリンはより重要な存在となって2度目の五輪へと向かう。