カワイ・レナードと組んだ5年間、勢いは次第に失速
ポール・ジョージは契約最終年となる来シーズンの4880万ドル(約73億円)のプレーヤーオプションを行使するか、それとも破棄してフリーエージェントとなるかを決断しなければならない。ローレンス・フランク球団社長がNBAドラフトのために行ったメディア対応では、46位指名権しか持っていないドラフトではなく、ジョージの去就に話題が集中した。
「我々はポールが好きだ。オールスターであり、リーグ屈指の2ウェイプレーヤーで、素晴らしい人物でもある。彼には残ってもらいたい。ただ、彼が契約を破棄するなら、その選択は尊重する」とフランク球団社長は言う。
クリッパーズはジョージに4年2億2100万ドル(約330億円)までの契約をオファーできるが、マックス額を提示しているのであれば、ずっと前に合意に至っているはずだ。カワイ・レナードはすでに来シーズンの契約最終年を破棄し、クリッパーズと3年総額1億5240万ドル(約230億円)で契約を延長している。カワイはある程度の譲歩を受け入れてクリッパーズに残ることを決めた。ジョージも気持ちは同じだろうが、問題はクリッパーズがどれほどの譲歩を求めているかという点だ。
おそらく、クリッパーズはカワイよりも多くの譲歩をジョージには求めている。ジョージの方が1歳年上で、たった1歳ではあるが34歳ともなればその差は無視できない。しかしジョージは年齢的に大きな契約を得る最後のチャンス。クリッパーズは優勝を狙える戦力を擁し、彼にとって地元ロサンゼルスのチームの居心地も良さそうだ。新シーズンには新しいアリーナの使用が始まり、そこでプレーすることには特別な意味がある。
しかし、契約はそれとはまた別の次元の話だ。クリッパーズ以外のチームは、彼がフリーエージェントになれば最大で4年2億1200万ドル(約320億円)を提示できる。その中でジョージの興味を最も引きそうなのはセブンティシクサーズだ。
ジョージとカワイがクリッパーズでコンビを組んだのは2019年夏のこと。2人はエースとして並び立ちながらも、5年間常にカワイが1番手の扱いだった。序列についてはジョージ自身が「カワイがNo.1で、僕はそれで全く問題ない」と明言している。ただ、プレーの内容でジョージはカワイに引けを取らない。最も重要なプレーオフでの出場試合数は、ジョージの38に対してケガの多いカワイは15で、これだけの差が契約内容に反映されないのだとしたら、ジョージは心穏やかではいられないはずだ。
おそらくシクサーズはクリッパーズ以上の条件を提示する。ここに来てウォリアーズもジョージ獲得競争に加わるとの噂が出てきた。クレイ・トンプソンの慰留が難しくなったウォリアーズは、『ステフィン・カリー時代』が続くうちは全力で優勝を目指す。そのためクリス・ポールを使ったサイン&トレードを画策しているという。
ジョージがカワイと組んだ5年間、クリッパーズは常に優勝候補ではあっても絶対的な存在ではなく、カンファレンスセミファイナル、カンファレンスファイナルに進出した最初の2年から勢いは衰えつつある。まだパフォーマンスに衰えは見られないとはいえ、34歳でキャリア最終章を迎えるジョージが、新たな舞台を選択しても不思議ではない。
フリーエージェント市場は最も有力な選手が自分の運命を自分で選ぶことができ、そのあとは『玉突き人事』となる。自分の運命を選べる立場にいるジョージは、どんな決断を下すのだろうか。