8月に35歳、大きな契約を得られる最後のチャンス
アレックス・カルーソを放出してジョシュ・ギディーを手に入れたブルズは、引き続き優勝を狙うのか、それとも再建に向かうのか。それは『次の一歩』、すなわちデマー・デローザンと再契約できるかどうかに左右される。
デローザンは3年8190万ドル(120億円)の契約を終えてフリーエージェントとなる。あと1週間はブルズの優先契約交渉期間で、ここでブルズとしては新契約をまとめてしまいたい。
だが、それは簡単ではない。デローザンにザック・ラビーンとニコラ・ブーチェビッチを加えた『ビッグ3』結成から3シーズンが経過したが、結果は出ていない。フロントはこの『ビッグ3』に固執し続けているが、それは最重要人物であるデローザンの残留あってこそ。昨年にラビーンとは5年、ブーチェビッチとは3年の契約延長を結んだが、今オフにデローザンを慰留できなければ、完全に解体へと向かうはずだ。
そのデローザンは去就についてどう考えているのか。4月にプレーイン・トーナメントで敗れてシーズンを終えた時点での彼は「僕がここに来た時には戦力が揃っていた。強豪と競い合う力のあるチームをコートに送り出してほしい」とフロントの奮起を求めた。
その後、ポッドキャスト番組『Run it buck』に出演する中で「僕としてはブルズに戻り、やり残した仕事を片付けたい」と語っているが、「これは結婚相手との関係みたいなもので、お互いを必要としているけど、解決しなきゃいけない問題があるから何をすべきか話し合っている。愛はあるんだ」と、ブルズを優先しながらも無条件で契約延長に応じるわけではないことも明らかにしている。
今シーズンのデローザンは79試合に出場して平均37.8分出場とフル稼働しており、年齢的な衰えが出ているわけではない。8月35歳になる彼にとっては、今回が大きな契約を得られる最後のチャンスなのだ。
スパーズからブルズにサイン&トレードされた時に結んだ3年8190万ドルという契約は、彼のパフォーマンスを考えれば格安だった。今回、彼は3年間で最大1億3000万ドル(約200億円)の契約を結ぶことができるが、ブルズはデローザンの年齢から3年契約に消極的なようだ。しかし、デローザンのパフォーマンスは3年前よりも上がっている。この3年間でオールスターに2度選出され、今シーズンもクラッチプレーヤー賞で次点となった。マックス契約かそれに近い契約をオファーするチームが出てきてもおかしくはない。
キャリアのピークにあるカルーソと若いギディーのトレードは、一般的には目先の優勝よりも将来を見据えてブルズが動いたように見える。ただ、ロンゾ・ボール復帰の目途が立たない状況でメインとなるポイントガードを獲得したという意味では、『すぐに勝つ』動きとも取れる。しかし、ブルズが勝てるチームになるにはさらなるロスター改革が欠かせない。
現状でチーム一番の高給取りであるラビーンはケガでほとんどプレーできず、プレーできている時期もシュートスランプに苦しんだ。2番目がデローザンで、3番目のロンゾは膝のケガから復帰の目途が立たない。ただでさえサラリーキャップの縛りが厳しい中で、この年俸と生産性の矛盾を解消しなければ、ブルズの復活はない。『痛みを伴う改革』なのは間違いないが、それに踏み切るだけの覚悟がフロントになければ、デローザンはブルズにキャリアを捧げることを良しとしないだろう。
コービー・ホワイト、アヨ・ドスンム、パトリック・ウィリアムズといった若手は今後もっと伸びるはずだし、ギディーも信頼して起用されればサンダー時代以上のパフォーマンスを見せるだろう。若いコアを引き続きデローザンが引っ張るのか、あるいは完全なる再編か。デローザンの去就とともに、ブルズの今後の行く先もこの数週間のうちに見えてくるはずだ。