「オリンピックが決まった時はうれしかったです。でも自分もあの場に立ちたかった」
バスケットボール男子代表は明日、明後日に行われるオーストラリア代表との強化試合に向け、20名だった強化合宿の参加メンバーを16名に絞った。ワールドカップ2023出場メンバーの西田優大と原修太に加え、須田侑太郎、今村佳太らクラブで中心選手として実績十分な選手たちがカットされる中、ベテラン組で激しいサバイバルレースに生き残っているのが張本天傑だ。
198cmのサイズを生かしビッグマンのマークにもつける守備力と3ポイントシュートを備えた張本は、トム・ホーバス体制の発足当初から代表に名を連ね、ワールドカップ予選Windowでは7試合に出場し、平均22分のプレータイムで7.9得点、3.6リバウンドを記録した。アジアカップ2022でも主力の一員として活躍し、本大会のメンバー入りが有力視されていたが、昨シーズンのチャンピオンシップで、右膝前十字靭帯断裂の重傷を負ったことで離脱を余儀なくされた。しかし、3月に公式戦復帰を果たすと、6月から始まった強化合宿で代表復帰を果たした。
「ワールドカップは見てましたし、オリンピックが決まった時は本当にうれしかったです。でも、やっぱり自分もあの場に立ちたかった気持ちが本当に強かったです。この悔しさをポジティブに変え、パリ五輪に出ることを次の目標としました」
このように昨夏の日本代表の躍進を見守っていた時の心境を教えてくれた張本は、現在のコンディションについても「ほぼ大丈夫です」と自信を見せる。だからこそ、今回の強化試合ではしっかりとインパクトを残したいと続ける。
「あとはどれだけこのチームにフィットできるかどうかです。まだ、試合形式の練習時間も少ないので、この2試合がチームだけでなく、個人にとってもすごく重要になってくると思います。3ポイントシュートだけでなく、パスをしっかりさばくことも自分の役割です。あとはディフェンス面もしっかりとアピールしたいです」
前十字断裂は長期離脱を余儀なくされる大ケガだ。しかし、張本は「焦りはなかったです。しっかりとリバビリをやってきたので」と言い、パリ五輪に間に合わないかもしれないという不安に負けなかった。
12名のロスター入りへ32歳の張本のライバルとなるのは、ジェイコブス晶(ハワイ大)、山ノ内勇登(ネバダ大)を筆頭とした自分より年下の選手ばかりだ。チームの中でも年長者となったことに、次のような心境の変化を明かす。
「今の若い子たちを見ると、なんか懐かしい感じがします。自分も最初はこんな感じで代表の座を勝ち取ったことがあるなと。外から見ている感覚ですが、個人的には昔よりガツガツする感じは減ってきました。歳も歳なので昔より落ち着いてきたなというのはあります。闘争心はないと言ったら言い方は悪いですが、丸くなったというのはあります」
そんな張本だが、もちろんパリ五輪の座を譲る気は毛頭ない。「うまく競争をしながら。最後まで残りたい気持ちは本当に強いです。他の若手選手より勝ってるのはやっぱり経験だと思います。そこをこの2試合で生かして、アピールしていきたいです」
本人は丸くなかったと語るが、今の張本のメンタルは年齢を重ねることで成熟したモノ。酸いも甘いも嚙み分けた経験豊富な彼だからこそできるプレーを、明日からの2試合で多く見せてほしい。