恩塚ヘッドコーチ「70%くらいは良い判断ができて、良いシュートが打てました」
6月20日、バスケ女子日本代表は札幌で行われたオーストラリア代表との強化試合2連戦の初戦を96-85で勝利した。日本は3ポイントシュート52本中20本成功が示すように積極的に長距離砲を放ち、効果的に決めることで序盤からリードを奪う。第3クォーターに追い上げられる場面もあったが、第4クォーターに激しいディフェンスからターンオーバーを奪っての速攻と3ポイントシュートで突き放して勝ち切った。
相手のオーストラリアはFIBA世界ランキング3位と日本より格上だが、今回の遠征メンバーにはエースのレベッカ・アレン(フェニックス・マーキュリー)やシアトル・ストームで平均13.4得点9.6リバウンドを挙げている193cmのエジ・マクゴベール、ミネソタ・リンクスで平均11.9得点のアランナ・スミスといったWNBAでプレーしている7名が帯同していない。また、ヘッドコーチのサンディ・ブロンデッロも、強豪ニューヨーク・リバティの指揮を執っているので不在だ。相手がベストメンバーではないことを加味する必要はあるが、それでも世界屈指の強豪を相手に計24ターンオーバーを誘発し、大量96得点を挙げたのは収穫たと言える。
恩塚亨ヘッドコーチは、今回の強化試合について次のようなテーマを持って臨んでいると明かす。「チームで大事にしたことは、個人の強みを出す、チームの強みを出し続けること。これは合宿中、ずっと大事にしてきたことで、相手の妨害やゲームがカオスな状況になっても強みを出す方法の答えを見つけることをテーマにしました」
その上でこの試合について、「70%くらいは良い判断ができて、良いシュートが打てました。途中で疲れてきたり、カオスになったときにやるべきプレーをまだまだできていないところがありました。そこをもっと突きつけめていければ選手の力をさらに発揮できて、もっとレベルの高いバスケットができると思います」と総括している。
この試合、日本は15選手が出場し、13選手が9分以上の出場とタイムシェアを徹底した。20得点の馬瓜エブリン、15得点の林咲希らと共に、大きなインパクトを残したのが町田瑠唯だ。東京五輪以降では日本国内で初の代表ゲームとなり、15分38秒のプレータイムで5得点6アシスト5リバウンドを記録。持ち味である巧みなゲームメークに加え、第2クォーターにはブザービーターで3ポイントシュートを決め会場を沸かした。
失点の多さを問題視「ディフェンスがあまり良くなかった印象があります」
「ディフェンスがあまり良くなかった印象があります。アグレッシブにできている時は、ターンオーバーを誘えましたが、イージーにやられている場面も何度かあったのでそこを修正したいと思います」
このように大量得点よりも失点の多さについて言及した町田は、自身のプレーについても「あまり判断は良くないと感じていて、それがミスに繋がっていました」と満足していない。恩塚ヘッドコーチ体制になって以降、町田はワールドカップ、アジアカップ、アジア競技大会といった国際大会すべてに出場していないが、それは故障やコンディション不良が原因で、強化合宿には参加し戦術については学び続けていた。
だからこそパリ五輪直前の今春から、恩塚体制では初の実戦となっても馴染んでプレーできているように見える。ただ、本人にとってはまだ習得できていない感覚のようだ。「頭で理解していても、自然に流れの中でプレーできているのかと言えばまだまだなのかなと。徐々に自分の感覚と、恩塚さんのバスケットは合ってきていると思いますが、たまに判断ミスだったり迷う部分があるので、そこをクリアできるようにやっていきたいです」
この不完全な状況でも、卓越したゲームメークと正確無比なパスで違いを生み出せているのは頼もしい。恩塚ヘッドコーチも、このように町田だからこそ生み出す効果を讃える。「町田選手はチームの戦い方を行なっていながら、『この選手はこういうシュートを打ちたい』と思い描いて、その選手と連携を取れています。一緒にプレーしている選手が心地よくプレーできているのはすごいところで、今後も期待しているところです」
この味方の持ち味を引き出し、気持ちよくプレーさせるのは町田の大きな武器だ。本人もこの点は強く意識しており、だからこそ今回、町田と同じく地元凱旋となった札幌山の手高校の後輩、東藤なな子について聞かれた際には「東藤選手の良さをまだ出し切れていないところがあったので、一緒に出る機会があったら引き出せるようにやっていきたいです」と気遣いを見せる。
今回、日本は3ポイントシュートがしっかり入ったが、シュートは水物でオープンで打てていても入らない時はある。そんな時、しっかりとハーフコートオフェンスを指揮し、味方の持ち味をより引き出せることができる町田の存在は、より大きな助けとなる。Wリーグでのプレーを見れば、今の町田が代表にしっかりフィットしている様子に驚きはない。パリ五輪に向け、日本のオフェンスに引き出しが増えたことを証明する一戦となった。