コーチ経験のなさは優秀なアシスタントコーチでカバー
現地6月20日、レイカーズが新たなヘッドコーチとしてJJ・レディックと合意に至ったと『ESPN』が報じた。レディックはデューク大で活躍したかつてのスター選手。バスケIQに優れ、相手ディフェンスとの駆け引きからギャップを見いだし、一瞬の隙を突いてビッグショットを決めるシューターとしてNBAで15年のキャリアを築いた。
レイカーズはプレーオフのファーストラウンドで『天敵』ナゲッツに1勝4敗とあっさり敗退すると、すぐさまダービン・ハムの解任を決め、後任探しを続けてきた。シーズン終了から2カ月、コネチカット大をNCAAトーナメント連覇に導いたダン・ハーリーにはオファーを断られたが、もともと有力候補の一人だったレディックに落ち着いた。
レイカーズはロブ・ペリンカGMが先月からレディックと複数回の面談を行っていたが、先週末にオーナーのジーニー・バスを含めた長時間の面談をあらたに行い、そこでレディックは経営陣を納得させるだけのビジョンを示したという。
レディックは現役時代から優れたバスケIQを持ち、解説者としても明晰な分析力を持ち味としていたが、コーチとしての経験は全くない。ダン・ハーリーは大学バスケでの経験があり、他の候補者はNBAでアシスタントコーチとして10年以上の下積みを経験する者ばかりだが、レイカーズはレディックをトップに置き、その脇を経験あるコーチで固めることでレディックの弱点をカバーするようだ。その候補としてはスコット・ブルックス、ジャレッド・ダドリー、サム・キャセル、ラジョン・ロンドといった名前が挙がっている。
レイカーズを成功に導くには、レブロン・ジェームズやアンソニー・デイビスといったスター選手と良好なコミュニケーションが取れることが第一条件で、なおかつ『レブロン以後』を見据え、サラリーキャップの縛りがどんどん強くなるNBAの今後のルール下で強いチームを作るのに欠かせない選手育成の能力も必要だった。
ただチームを率いるだけでなく、クラブに『勝利の文化』を築くことのできる人物としてレディックは注目され、結局はそれがコーチとしての下積み経験よりも優先された。『The Athletic』はこれを「長期に渡りクラブを導くパット・ライリーのような存在になり得る候補」と表現している。
もっとも、レイカーズは2011年にフィル・ジャクソンが去った後、7人のヘッドコーチを雇っては解任してきたチームだ。中長期的視野に立ってチームを作る現場のトップにレディックを選ぶのは良いが、『勝利の文化』を築くことの難しさをフロントが本当の意味で理解し、一つの敗北でパニックになり、ヘッドコーチに責任を押し付ける悪癖から脱却できるかどうかも大きなポイントになる。