写真=Getty Images

ダンクパフォーマー集団『Team Flight Brothers』が協力

今年のダンクコンテスト優勝を飾ったペイサーズのグレン・ロビンソン3世について、正直に言って、NBAファンの大半がノーマークだったのではないだろうか? 元NBA選手の父を持つとはいえ、2年目の若手であり、レギュラーシーズンでさしたるインパクトを残したわけではない。

大半が昨年ザック・ラビーンと激闘を繰り広げたアーロン・ゴードンの優勝を予想していたはずだ。

しかし蓋を開けてみたら、誰よりも周到に準備していたのはロビンソン3世だった。『肩車超え』という前代未聞のパフォーマンスで観客とジャッジの心を奪うと、そのまま決勝まで進出。サンズの新鋭デリック・ジョーンズJrとの戦いも『ポール・ジョージ超え』で制し、NBAトップダンカーの称号を手にした。

大会後、ロビンソン3世は『DIME』の取材に対し「実は6本か7本くらいのダンクを準備していた」と明かしている。

「NBAファンが今までのダンクコンテストでも見たことがないようなショーを見せたかった。だから、入念な準備をして、世界中を驚かせたかったんだ」

ボールを持たずにスタートするダンクは『師匠』の教え

そのロビンソン3世には、ダンクパフォーマー集団『Team Flight Brothers』の創始者チャック・ミランという強力な味方がいた。ミランは、ロビンソン3世の代理人から要請を受けて協力を快諾。それから互いに忙しいスケジュールの合間を縫い、週に2度、30分から45分ほどの特訓を行ない、ロビンソン3世にダンクの技術や芸術性を教え込んだ。

ミランは過去のダンクコンテスト優勝者ジョン・ウォール(ウィザーズ)、テレンス・ロス(マジック)を指導した経歴を持ち、ダンクのフォームを事細かに分析し、どういうタイプのパフォーマンスが適しているかを決めている。

ロビンソン3世は垂直跳び105cmを記録する超絶アスリートで、跳躍の前に両足で踏ん張り、滞空中はダンクコンテスト史にその名を刻んだドミニク・ウィルキンスと同様に右足が前に出る癖があるのだとか。

細かな分析の結果、ミランはロビンソン3世がボールを持たない状況でスタートするほうが適していると判断。その結果、協力者が後頭部付近にボールを持つ形が取られた。会場を沸かせた『肩車超え』ダンクの練習風景を『Team Flight Brothers』がYouTubeに投稿している。

『師匠』は早くも来年のダンクコンテストを意識

ミランは電話やメールでロビンソン3世と連絡を取り合いながら、ダンクを実行に移す際の心構えについても指導した。結果、見事に優勝を果たした『教え子』について、ミランは次の言葉で称えている。

「私が指導した選手の中でも最も学習能力の高い選手だ。これだけしっかりした準備ができたのは、彼の努力、献身的な姿勢、理解力の高さの賜物だよ」

ドローンを使ったダンクを試したゴードンが、アイデア重視ではなく身体能力を重視したダンクに絞っていたら、ロビンソン3世も苦戦したかもしれない。それでもミランは、ダンクコンテスト前の練習時から、自分たちが最も用意周到に準備してきたことを確信していた。

『ビッグ・ドッグ』の愛称で知られた父親の影に隠れた存在だったが、ロビンソン3世はようやくNBAで一つの『タイトル』を獲得した。気になる来年のコンテスト参加について、本人は出場するかどうかを明確にしていない。それでもミランは『DIME』に、すでに2018年用のプランがあると語っている。

「来年のコンテストまであと12カ月しかない。もし彼がタイトルを防衛しないとしたらサプライズだよ。ただ、もし彼が来年も出場すれば、ほかの出場者にとっては厄介でしかないだろうがね」