栃木ブレックス

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

後半を48-28、ディフェンスから走った栃木が快勝

栃木ブレックスがホームのブレックスアリーナにシーホース三河を迎えた一戦。前半で49失点を喫した栃木の選手たちは、「点の取り合いをするんだったら、もうちょっとオフェンスの判断を良くしてくれ」と安齋竜三ヘッドコーチから皮肉られ、ディフェンスマインドへと回帰。その結果、後半を48-28と圧倒し勝利を手にした。

三河は前節に続き金丸晃輔が欠場し、桜木ジェイアールも欠場と得点力ダウンが懸念されたが、先手を取ったのは意外にも三河だった。しっかりパスを回し、インサイドで面を取った時にすかさずパスを供給することで、タイミング良くボールを受けたアイザック・バッツ、ケネディ・ミークスがインサイドで確実に加点していく。さらに、今シーズン2度目の先発出場の松井啓十郎、岡田侑大がそれぞれ2本の3ポイントシュートを成功させるなど、高確率でシュートを沈め三河が先行する。

それでも栃木では渡邉裕規が活躍。ピック&ロールから、インサイド陣を警戒する三河ディフェンスの動きを確認し、自身へのマークが甘くなった瞬間を逃さずシュートを放ち、3本の3ポイントシュートを含む18得点の荒稼ぎを見せた。しかしチームにはディフェンスの軽さが見られ、第1クォーターを終えて28-33とビハインドを背負った。

その後も、狩俣昌也と熊谷航のダブルガードがインサイド陣の得点を演出する三河がキープするが、オフィシャルタイムアウトが明けると栃木が流れを引き寄せる。トラップディフェンスでボールを奪取し速攻を展開し、西川貴之が4番を守るミスマッチの状況を確実に突く。さらにはアウトナンバーから渡邉が3ポイントシュートを沈め、50-49と逆転して前半を終えた。

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ボールマンへの強烈なプレッシャーが功を奏す

そして後半、指揮官の言葉でディフェンスのプライドを刺激された栃木は、プレーの強度を一段階上げる。前線から強烈なプレッシャーを仕掛けてターンオーバーを誘発し、それを確実に得点につなげていく。

「ポストに入るまでのディフェンスをどのくらい頑張れるかを一週間やってきました。第1クォーター以外はそれが出せて、自分たちのペースに持っていけた」と安齋ヘッドコーチが言うように、ガード陣へのプレッシャーを高め、簡単にボールを回させない状況を作り出した。

ディフェンスが機能した栃木は、リバウンドから走り、ライアン・ロシターやジェフ・ギブスが高さとフィジカルのミスマッチで次々とイージーシュートを決めていき、14-0のランが飛び出すなど、最大で17点のリードを奪った。

三河の鈴木貴美一ヘッドコーチは「第3クォーターに入って若さが出てしまった。ミスから相手にブレイクを出された」とこの時間帯を悔やむ。三河は連続3ポイントシュートなどで10点差まで戻すも、強度の落ちない栃木ディフェンスの前にタフショットを強いられ続ける。前半は63.3%と高確率で決まったシュートは、後半では33%まで落ち込み得点が止まる。

ベンチメンバーが出ても攻守ともに圧倒した栃木は、残り6分33秒に鵤誠司の3ポイントシュートで点差を20点の大台に乗せ、早々に勝負を決めた。

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敗れはしたが「さらに可能性があるように感じた」

最終スコアは98-77。勝利した栃木の安齋ヘッドコーチは「オフェンスもディフェンスも軽く、後手後手から入ったので、切り替えるまでズルズルいきました」と苦しんだ前半を振り返った。それでも、発破が効いたことで、「ディフェンスから自分たちのオフェンスにと気持ちが行ってくれた」と、ディフェンスマインドを取り戻したことを勝因に挙げた。

敗れた三河の鈴木ヘッドコーチは「得点源である桜木選手と金丸選手がいませんでしたが、若い選手がアグレッシブにやってくれて前半は非常に良かった。負けて悔しいですが、いろいろ成長して、さらに可能性があるように感じた。うれしく思っています」と、敗れても収穫を語る。

これで栃木は今シーズン2番目に長い6連勝を達成。横浜ビー・コルセアーズに勝利した千葉ジェッツの背中をピッタリと追っている。勝率トップを巡る争いは、シーズンの最後まで続きそうだ。