ゼイビアー・ティルマンSr.

「出番が回ってくるという心構えはできていた」

敵地でマーベリックスの猛追を振り切り、3勝0敗で優勝に王手を掛けた。盛り上がるべき場面はいくらでもあったが、セルティックスのベンチが最も喜びに沸いたのは第3クォーター残り2分、ゼイビアー・ティルマンSr.がコーナースリーを沈めた場面だ。その前にはルカ・ドンチッチのシュートを叩き落す場面もあり、控えビッグマンの攻守のハッスルに、セルティックスのチームメートは大いに盛り上がった。

ティルマンはキャリア4年目の25歳で、2月のトレードデッドラインでグリズリーズから加入した。グリズリーズでは20.6分だったプレータイムが、セルティックスでは13.7分へと落ち込み、プレーオフではローテーション外に置かれた。プレーオフで彼に出番があったのは16試合中6試合のみ。そのプレータイムを合わせても40分足らずで、大事な時間帯を任されることはなかった。

その彼が、NBAファイナル第3戦でアル・ホーフォードに続くセンターの2番手を任された。クリスタプス・ポルジンギスが足首のケガでプレーできず、ルーク・コーネットも調子が上がらずファイナルではガベージタイムにしか出場していない。それでも指揮官ジョー・マズーラは、自信を持ってティルマンをコートに送り出した。

「いつチャンスが来てもいいように準備を整えておく。僕はキャリアの大半でそうしてきた」とティルマンSr.は語る。「僕はルーキーで出場機会を得られた。ジャレン・ジャクソンJr.が半月板をケガしていたからだ。それで先発になり、その後にローテ外となり、ブランドン・クラークとスティーブン・アダムスのケガでまたチャンスを得られた。だからKP(ポルジンギス)の回復が思うようにいかなかった場合、自分に出番が回ってくるという心構えはできていた」

ポルジンギスのようなサイズと技術はティルマンにはない。それでもグリズリーズで3年半を過ごした彼には『Grit and Grind』の精神が宿っている。身体を張って守るべきエリアを守り、リバウンドに食らい付き、あきらめず一歩を踏み出す。11分のプレーで4リバウンド2ブロック。唯一放ったシュートが、チームメートを沸かせた3ポイントシュートだった。目立つスタッツではないが、彼がコートに立っている時間帯の得失点差は+9。この試合でのホーフォードはフットワークの悪さをカイリー・アービングに突かれ、ミドルジャンパーを次々と決められていたが、ティルマンSr.はそれを許さなかった。

「KPがプレーできないと知ったのは会場に着いてからだけど、ただ自分らしくプレーするだけだった。それはディフェンス、コミュニケーション、スクリーン、コーナースリーだ。プレーを楽しむことができたよ。スイッチディフェンスは自分の俊敏さと強さを生かせるし、高さで勝負する必要がないから得意なんだ。自信を持ってプレーできたと思う」

3ポイントシュートを決めたのは『オマケ』の活躍なのかもしれない。それでも、彼自身にとっては忘れられない瞬間だった。ティルマンSr.に何の警戒もしていなかったマブスの守備に、まさに『代償を払わせる』一発だった。

「特に説明するようなこともないんだけど、気分は良かったね」と彼は笑う。「絶対に決めるつもりだった。シュートを決め、ベンチが大騒ぎしているのを見てうれしかった。チームメートと一緒に毎日お互いを高め合い、誰が呼ばれてもチームに貢献するための準備をしてきた。僕のその努力を分かっているから、みんな喜んでくれたんだ」

ホーフォードは「彼のディフェンスは特別だった」と言い、ジェイレン・ブラウンはティルマンのコーナースリーを「神聖な体験だった」と語る。『ネクスト・マン・アップ』の精神を体現したティルマンSr.が、セルティックスに大きな1勝をもたらした。