八田滉仁

主将の八田、ぶっつけ本番の3番起用

6月2日、全国高校総体バスケットボール大会の福岡県予選、決勝リーグ最終戦で福岡大学附属大濠高校と福岡第一が激突。63-64と1点に泣いた5月の福岡県中部ブロック予選決勝のリベンジを期した第一だったが、第3クォーターに2度同点に追いつくも、ファウルトラブルや速攻時のレイアップのミスなどが響き終盤にじわじわと離され61-71で敗れた。

新チームになって5カ月、別々のユニットで起用してきた八田滉仁主将(3年)と、宮本聡と耀の双子(ともに2年)を同時起用したのは6点ビハインドの第2クォーター。ゲームメイクを任せ、得点とディフェンスに集中した八田は出だしでディープスリーとブレイクで連続得点した。「自分が3番ポジションに入ると、ミスマッチもあるけど走力が上がるので速いバスケができる」。言葉どおりにテンポを上げた。

4月まではバックコートは八田と崎濱秀寿(2年)が先発で、宮本ツインズがセカンドユニットだった。プレータイムもシェアしていたが、3番起用によって八田がコートにいる時間も延びる。八田の3番起用はぶっつけ本番だったが、大きな収穫となった。

シー・ムサ(2年)の16得点に次ぐチーム2位の13点を挙げた八田が悔やむのは第3クォーターだ。残り5分、41-41の場面とその直後のプレーで「2本のレイアップを落として流れが変わってしまった。自分の責任です」。切り替えられずハーフコートオフェンスにも引きずった。「最初から井手口(孝)先生から『ドライブで行け』と言われていたのですが1、2本止められて迷いが出ました」と視線を落とした。右足の負傷から復帰して間もなく、状態が上がっていない影響がプレーに出た。

6戦6敗という結果は素直に喜べないが、4月の飯塚カップ2024で68-100の大敗を喫したことを踏まえれば、チームの整備は進んでいる。八田に加え崎濱、サー・シェッハ(3年)も負傷したため、「サーを欠いた状態ではマンツーマンができないし、聡と耀のミスマッチを解消できる」(井手口孝コーチ)と、5月の中部ブロック予選から2-3ゾーンを取り入れた。生徒たちには「ゾーンはごまかし。最後はマンツーマンで抑えられるようになろう」と伝えているとはいえ、ゾーン特有の背後からボールを奪われる感覚に大濠のインサイド陣も戸惑いを隠せなかった。

宮本聡

井手口コーチ「速攻のレイアップのミスは10点分の価値があると伝えてきました」

先発起用された宮本ツインズも進化を見せている。この日はそろって6得点。ポイントガードの兄聡はディフェンスで魅せた。第3クォーターには体重で10kg重い大濠の榎木璃旺に当たり負けせず、バックコート・バイオレーションを誘った。さらにブレイクを許した場面では見竹怜からオフェンスファウルを誘発。1年の秋から試合出場を続け、蓄積した疲労もあり身体作りが遅れていた。トレーニングの時間、食事を増やし体重は4kg増量の59kgに。「フィジカル面で押し込まれることが減りました」と手応えをつかんでいた。弟の耀は5月の対戦で3ポイントシュート4本を含む22得点を挙げ、この日は2本に留まったが、八田と同時にコートに立った時間帯はバランスを取りながらプレーした。

試合後は第一の先発ガードとして敗戦の責任を感じていた。聡は「前回に続いて勝てる試合を落としてしまった。そこが大濠と第一の差。最後に勝ち切れるかどうかが本当の実力。決め切ることができなかったです」と言い、耀は「自分たちが勝たせられなかった部分が変わっていないのが悔しい。まだまだ練習不足です」と唇をかんだ。

井手口コーチは「速攻のレイアップのミスは10点分の価値があると伝えてきました。ブレイクを決め切れなかったのが大きかった」と振り返る。それでもこの2試合の内容は評価している。「これまでは打つ手がなかなかうまくいかなかったけれど、だんだん手が打てるようになってきたね」。

新チーム発足後の目標は地元開催のインターハイ優勝。「福岡2位」での出場となったが、九州大会を制すればシードを手にできる。ライバルの大濠に先を行かれているが、遠かった頂への道筋がようやく見え始めた。