カイリー・アービング

盛大なブーイングを浴びるも「慣れたものさ」

マーベリックスはNBAファイナルの初戦でほとんど良いところのない完敗を喫した。ルカ・ドンチッチは30得点と気を吐いたが、彼のアシストはわずか1。このレギュラーシーズンで平均9.8、プレーオフでも8.4あったアシストを封じられ、チームオフェンスが機能しないまま個人で強引に仕掛けることになったが、それではセルティックスに勝つことはできない。

セルティックスはダブルチームに行かず、1対1をしっかり守ることでワイドオープンのチャンスを作らせなかったが、それにしてもドンチッチ以外のマブスのシュートはあまりにも決まらなかった。

ドンチッチに続いてオフェンスを引っ張るべきカイリー・アービングはフィールドゴール19本中6本成功、3ポイントシュートは5本すべて外しての12得点に終わった。ティップオフ前からTDガーデンを埋めたボストンのファンは彼にブーイングし、試合が始まってカイリーがボールを持つたびに『カイリー・サックス!』と叫んだ。

「もうちょっと大きな声でやられると思ったよ。でもこれは第2戦でも起こるだろうね」とカイリーは言う。「観客は僕の集中を妨げたいんだ。でも、僕はエネルギーを試合に向ける。この環境に身を置くのは慣れたものさ。キャリアの初期はボストンとはこういう関係じゃなかったけど、ここ数年はプレーオフに限らずレギュラーシーズンでもこんな感じだ」

カイリー個人として、TDガーデンで最後に勝ったのは3シーズン前のプレーオフで、それから11試合負け続けている。「弱点を知られているのかもね。認めたくないけど、過去に所属したチームが相手だと、そういうこともある。でも、セルティックスはこの数年間ずっと強いから、そこに敬意を払いたい。それと同時に、自分たちの最高のプレーを見せて渡り合いたいとも思う。ファイナルで勝つには、最高のプレーを4試合やらなきゃいけない」

会見に現れたカイリーは、手にボールを持っていた。「ボールが必要なんだ。特にシュートを決められなかった日はね。今日は良いシュートが打てていたけど、リムに当たったり左右にズレたりした。大事なのは自信を失わず、落ち着いてプレーし続けることだ」

マブスを率いるジェイソン・キッドはカイリーの出来について「良いシュートを打っていた。ただ今日は決まらなかっただけだ」と深刻にはとらえていない。カイリーも同じで、ただ自信を失わないためにボールが必要なのだろう。

カイリーはこう語る。「周囲からはいろいろ言われる。どうすればもっと良くなるのか、どうすれば勝てるのか、このチームは勝てるのか負けるのか。人々はあれこれ口を出す。でも、この状況下で落ち着きを保たなければいけない。まずはそこからなんだ。ブーイングやシュートを外したことじゃなく、自分たちのプレーへの姿勢、一つひとつのポゼッションへのアプローチを考えるべきだ」

ただ、この先のシリーズがどういう展開になるにせよ、カイリーが個人的に少なくとも一度はTDガーデンを攻略しない限り、マブスの優勝はない。大きなプレッシャーになりかねない状況だが、マブスで誰よりも経験豊富な彼は落ち着いた表情でこう語った。「この時期にバスケができる、それ以上のことはないよ。最高の2チームが残っているのだから、ベストを尽くすだけさ」