デレック・ライブリー二世

「成功の定義とは『昨日と同じ人間でいないこと』だ」

デレック・ライブリー二世は夢のようなルーキーシーズンを送っている。NBAドラフト1巡目12位指名を受けてマーベリックスに加わった彼は、開幕戦から31分プレーして16得点10リバウンドのダブル・ダブルを記録。途中にケガがあったり、プレータイムを減らされる時期もあったが、それでもレギュラーシーズンで55試合に出場し、プレーオフでその存在感はさらに強まっている。

カンファレンスファイナルでは第3戦に相手選手に頭を蹴られて次戦を欠場したが、復帰した第5戦では9得点8リバウンド3アシスト3ブロックを記録。ティンバーウルブズが誇るルディ・ゴベアとカール・アンソニー・タウンズを上回るインパクトを残した。

ルーキーイヤーの快進撃を「誰も予想していなかったと思う」とライブリー二世は言う。「みんな僕がまずは学ぶことを期待していたけど、僕は学んだことをすぐに実践した。プレーコールやポジションなど最初は分からないことばかりだったけど、チームの仲間たちはルーキーの僕を根気強くサポートしてくれた。そして僕は、やれるようになるまでやり続けてきた」

彼曰く、支えてくれる一番の人物はヘッドコーチのジェイソン・キッドだ。「彼は僕が失敗するだろうと分かっていてもその役割を任せてくれる。失敗してもそのままにしておく。僕がそこから学ぶためだ。彼のコーチングスタイルは僕にすごく合っているよ」

失敗も多いが、そこから学ぶことで急ピッチでの成長を続けている。「僕はいつだって一番困難な選択肢を選ぶ。楽な道は選ばないんだ。物事が上手くいっている時も、そうじゃない時も、泣き言を言うのではなく仲間と力を合わせて乗り越えるんだ」

彼がフォーカスするのはチームの勝利であって、自分のスタッツではない。「僕は試合に勝つためにここにいる。得点やリバウンドとか何試合で先発出場したかとかは気にしない」と彼は言う。2月にダニエル・ギャフォードとPJ・ワシントンを獲得してインサイドの層が分厚くなり、彼らとのタイムシェアでライブリー二世のプレータイムは減ったが、それでチームが勝てるようになったのだから彼としては大歓迎だ。

彼らがタイムシェアをしながら常に100%の強度で動き回り、ルカ・ドンチッチとカイリー・アービングのサポートにも全力を尽くす。ドンチッチとカイリーが目立つチームではあるが、それを支えるインサイド陣の働きも見逃せない。そして、ライブリー二世はルーキーながらそこにガッチリと食い込んでいる。

レギュラーシーズンで得た自信は、プレーオフでさらに増している。レギュラーシーズンで最高勝率を残し、プレーオフでわずか2敗を喫しただけでNBAファイナルに駒を進めたセルティックスが相手でも、ライブリー二世は自信を持ってコートに立つ。

「NBAファイナルでも僕は何らかのミスをするだろうけど、そこから学んで修正するのが楽しみだよ。僕にとって成功の定義とは『昨日と同じ人間でいないこと』だ。学ぶこと、何かを変えること。その緩やかな変化が人生を変えていく」

しかし、失敗すると決まったわけではない。ウルブズとの4試合で、彼はフィールドゴール16本をすべて成功させている。ゴール下のイージーシュートの機会が多いことを差し引いても素晴らしい数字だ。そのことを問われた彼は「僕の肩には天使がいる」と、亡き母のことを語った。「ダンク、ちょっとしたフックシュート、フリースロー、コートで声を出すこと。そのすべてで母さんが助けてくれていると感じているよ。16本のシュートすべてを決めることができたのは、母さんのおかげだ」