ティンバーウルブズを3試合連続『ラスト3分』で圧倒
前年王者ナゲッツとティンバーウルブズの対戦を『事実上のファイナル』と見る者は少なくなかったが、その戦いを制したティンバーウルブズは、西のカンファレンスファイナルでマーベリックスに0勝3敗と追い詰められている。指揮官クリス・フィンチは言う。「すべてラスト3分の攻防で負けている。ここで苦戦していることは否めない」
プレーオフを勝ち抜くために必要なスターパワーを持っているのは明らかにマブスで、ルカ・ドンチッチとカイリー・アービングの2枚看板は恐るべき勝負強さを発揮している。ドンチッチは「相手は僕にダブルチームに来て、カイリーにもダブルチームに行く。だから僕らは全員で対抗する。みんながボールタッチして、プレーを決める」と語るが、相手ディフェンスからすればドンチッチとカイリーが脅威だからこそ他の選手を放置せざるを得ない。
ダブルチームからローテーションでズレを作らないよう必死で足を動かしても、一瞬の遅れが命取りになる。104-104で迎えた残り3分半、ピックを使うドンチッチからカイリーへとパスが渡る間、アンソニー・エドワーズとマイク・コンリーの意識がほんの少し食い違っただけで、PJ・ワシントンのコーナースリーを浴びることになった。すべてにおいて完璧でなければマブスの攻めは止められないが、残り2分でドンチッチが決めたスピンムーブからのターンアラウンドジャンパーのように、すべて完璧に対応しても止められない理不尽さまで出してくるのだから、手の打ちようがない。
このシリーズでのマブスの3勝はすべて『ラスト3分の攻防』で上回っての勝利であり、ラスト3分の合計スコアで24-11と圧倒している。カイリーは「クラッチタイムは僕らの稼ぎどころだ」と言う。「最後の数分間でも落ち着いて自分たちのスキルセットを発揮できている。層の厚さもモノを言っているし、相手に『どの毒を飲むか』という選択を強いている」
さらに今回のプレーオフで目立つのはドンチッチの得点以外での奮闘ぶりだ。この第3戦でのドンチッチは33得点だけでなく7リバウンド5アシスト5スティール1ブロックを記録。残り2分、エドワーズが押さえきれなかったルーズボールにドンチッチが飛び込んだシーンではダラスの観客が総立ちとなり、アリーナ全体が彼の闘志をさらに煽り立てた。
もっとも、一番の盛り上がりは残り35秒、ダニエル・ギャフォードとのピック&ロールから、ルディ・ゴベアの頭上を浮かせたパスでギャフォードのアリウープをアシストしたシーンだ。前の試合ではドンチッチがウルブズ守備陣にスイッチを強いて、ゴベアとの1対1からゲームウィナーを決めている。そのイメージがあるだけに、ギャフォードがダイブしているにもかかわらず、ジェイデン・マクダニエルズもゴベアもドンチッチを警戒しており、まさにカイリーの言う『どちらの毒を飲むか』というシーンだった。
プレーオフで0勝3敗となったチームが逆転した例はない。だがマブスに油断はない。ドンチッチは「最高の気分だけど、次の試合に向けてまた集中しなきゃいけない。ウルブズがあきらめるはずはないんだから、僕らも同じメンタリティでプレーしないと」と言う。そしてドンチッチとのコンビがNBA史上最高のバックコートなのではと聞かれたカイリーはこう答えている。「一緒にリングを取らなきゃ意味がない。今は僕らより先に一緒にリングを獲得したコンビに敬意を表するよ。でも、僕たちの番もやってくる」