相手の隙を突くインテリジェンスで得点を積み上げる
2連敗でホームへ戻ったペイサーズは、エースのタイリース・ハリバートン不在で第3戦に臨みました。苦しい戦いどころか、一方的な展開で負けることも予想されましたが、アンドリュー・ネムハードとTJ・マッコネルのポイントガード2人がハリバートン不在を感じさせないプレーでチームを牽引しました。
序盤のペイサーズはセルティックスのスイッチを多用するディフェンスに対し、しっかりとツーメンゲームを作って高さのミスマッチを作り、マイルズ・ターナーやパスカル・シアカムがゴール下で押し込んでいきました。ネムハードとマッコネルは、まずはポイントガードとしてゲームプランに沿ったプレーメーク能力を発揮して互角の展開へと持ち込みます。
するとセルティックスは高さで押し込まれないように、オフボールでもフィジカルなポジション争いで対抗してきましたが、それはヘルプディフェンスが難しくなるということでもあり、空いたスペースにネムハードがドライブを仕掛け、フリーのレイアップを生み出します。個人での突破能力に優れるわけではないネムハードですが、ディフェンスの隙を突くインテリジェンスで得点を積み上げました。
ベンチから登場したマッコネルは、ハンドラーとして常に動きながらパスコースを探しますが、セルティックスが連携を分断することを優先したディフェンスをしているのをみると、ショートレンジのジャンプシュートに切り替えました。また、良いシュートシーンを作れずショットクロックがなくなるとエンドライン際でのフェイダウェイなど、ギリギリの状況で決めきるマッコネルのフィニッシュ力も光りました。
ゲームプランに沿ったオフェンスの構築から、ディフェンスの変化に合わせてプレーを変更する判断力、そしてタフショットも決め切るメンタリティ。2巡目指名で2年目のネムハードとドラフト外から這い上がったベテランのマッコネルが、スター選手のような存在感でペイサーズにリードをもたらしたのです。
前半だけでペイント内で42点を奪われたセルティックスは、後半になるとアウトサイドまで追いかけるのをあきらめ、ペイント内を固めるディフェンスへと切り替えました。3ポイントシュートは外れるのを祈るしかない消極的な戦略変更ではありましたが、この変更が当たり後半のペイント内失点を26点に抑え込みます。また、ペイサーズはネムハードとマッコネルは勝負どころで3ポイントシュートを決めたものの、その他の選手が放った11本すべてが外れ、逆転を許してしまいました。
迎えた残り8秒でリバウンドをとったネムハードはタイムアウトを使わず『自分で決める』という強気な勝負を仕掛け、一旦はドリュー・ホリデーのバランスを崩したものの、ドライブコースを読み切られ痛恨のターンオーバーを喫してしまいました。決めればヒーロー、外せば戦犯という場面で勝負に出るメンタリティは称賛に値するものの、最後の最後は「ハリバートンがいれば」となり、ハッピーエンドとはなりませんでした。
ネムハードは39分のプレーで32得点9アシスト、マッコネルは29分のプレーで23得点6アシストを記録。試合に敗れたとはいえ、カンファレンスファイナルという大舞台で2人が見せたプレーは見事でした。何よりスター選手とは言えない2人がエース級の働きを見せたことは、チームレベルでも個人レベルでも実力伯仲の今プレーオフを象徴する試合でした。ただし、これで0勝3敗ともう後がありません。