「レギュラーシーズンで自分たちが苦しんだ末に導き出した答えをコートで表現できました」
琉球ゴールデンキングスは5月21日、千葉ジェッツとのチャンピオンシップ(CS)セミファイナル第3戦に83-67で勝利。第1戦は落としたが、そこからの連勝による逆転勝ちで3年連続のファイナル進出を決めた。
1勝1敗で迎えた第3戦、琉球は81-63で快勝した第2戦と同じく強度の高いディフェンスで流れをつかみ、22-14と先行。その後も主導権を握り続け、15点リードで前半を終える。後半は立ち上がりで千葉Jに7-0のランを許し、詰め寄られるが、岸本隆一 の3ポイントシュートなどで7-0のランをやり返し、最後まで千葉Jのオフェンスの爆発を防いて逃げ切った。
このシリーズは奇しくも、3試合ともに第1クォーターでリードを奪ったチームが勝ち切った。そして第2戦、第3戦で、琉球のスタートダッシュに大きく貢献したのが今村佳太だった。
今村はアルバルク東京とのクォーターファイナル第3戦の終盤に足を痛めて、負傷退場。セミファイナルでの出場を危ぶまれ、第1戦は途中出場かつプレータイムも制限されていた。しかし第1戦で62-95と大敗を喫し、後がなくなったことを受けて第2戦、第3戦と先発に復帰。そして、確率よく3ポイントシュートを決めるなど活躍し、勝利の立役者となった。
「今日は本当にディフェンスの遂行力が素晴らしかったです。ゲーム2と同様、レギュラーシーズンで自分たちが苦しんだ末に導き出した答えをコートで表現できました」
このように第3戦を総括する今村は、自身の足の状態について「(A東京戦で負傷した直後は)セミファイナルに出られるとは思っていなかった」と明かし、周囲の尽力によってコートに立つことができたと感謝を強調した。
「幸い、骨や靭帯に異常がなかったことがすごく大きかったです。そして、出られる状態にまで持っていってくのに、チームトレーナーと琉球大学病院さんにすごくサポートしていただきました」
そして、第2戦から自ら望んで先発に戻った理由については次のように語る。
「元々、今までやってきたスタートのメンバーは流れを作る上で重要なのかと思っていました。それに加えてゲーム1の敗戦を受けて何かしら変えないといけない。特に出だしで主導権を取れるかが鍵になってくると思いました。正直、足も痛かったですし、足首の状態は良くなかったですが、それでも自分がコートに立つ意味はあると思っていました」
いよいよファイナル「自分たちのことにしっかり集中して戦っていくことが大事だと思います」
当然だが、この3試合の今村は本調子ではなかった。普段の彼は、攻撃の起点となりつつ外国籍フォワードを含めた相手のエーススコアラーのマークにつき、大黒柱として攻守で多くの役割を担っているが、このシリーズでは役割、出場時間ともに限定せざるを得なかった。
だが、その中で持てる力を出し切り、特にシューターとして大きなインパクトを与えた。「やれることが限られている中、キャッチ&シュートはできることだったので狙っていこうと。特に前半は、ここで流れができればそこで自分の仕事が終わってもいい、というくらいの気持ちでした」
万全でない中で試合に出ることで、故障を悪化させてしまう可能性はある。本来の力を出せない中でコートに立つことで、チームのリズムを崩してしまうかもしれない。そういったリスクを十分に認識しながら、それでも今村は満身創痍の中でプレーすることを選択した。
この覚悟の根底にあったのは、『自分は琉球のエースだ』という矜持だったのか。こちらの問いに対し、今村は「もちろん、そういう気持ちがなかったと言ったら嘘になります」と答え、それ以上に彼を突き動かしたのは純粋なチーム愛であり、高い忠誠心だったと明かした。
「何よりもチームメート、ブースターの皆さん、琉球ゴールデンキングスに関わる皆さんが自分を必要としてくれた。やっぱりその気持ちに応えないといけないという思いでコートに立とうと思いました。試合を通して迷惑をかけてしまう部分もありました。それでも自分を必要としてくれる限りは応えたい。この気持ちが、足の痛い中でも、突き動かしてくれた原動力になりました」
ファイナル連覇を目指して対戦するのは広島ドラゴンフライズとなる。広島のエースは、2022年に琉球を初のファイナル進出に導いたドウェイン・エバンスだ。
「Bリーグファイナルという素晴らしい舞台で、今度は対戦相手としてかつてのチームメートと対戦するのは楽しみで、素晴らしい機会に恵まれたと思います」。このように、かつての盟友との大一番での対決を語る今村だが、勝利の鍵は自分たちにベクトルを向けることと考える。
「広島さんは本当に勢いのあるチームで、難しい戦いになると思います。ただ、特にこのチャンピオンシップは相手が誰であろうと、自分たちがやっていかないといけないことにフォーカスしたことで結果が出ています。自分たちのことにしっかり集中して戦っていくことが大事だと思います」
ファイナルにおいても、立ち上がりでいかに自分たちのリズムをつかむかは勝敗を分ける大きなポイントとなる。琉球が引き続きファーストパンチを相手に食らわせるためには、例え万全でなくても今村の存在は重要だ。
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