第2クォーターに10得点「前半に勢いを作るのは自分の役目」
琉球ゴールデンキングスは、アルバルク東京とのチャンピオンシップ(CS)クォーターファイナル第3戦に58-57で勝利。3試合すべてが終盤までもつれる激闘を制して、セミファイナル進出を決めた。
4日間で3試合目と互いの手の内は知り尽くし、さらに激しいフィジカルゲームを初戦から続けていた影響もあって、第3戦は互いに重たいオフェンスとなり、第1クォーターは琉球の12-9とロースコアの出だしに。第2クォーターに入ると、琉球はこのクォーターで10得点を挙げた岸本隆一の活躍で突き放しにかかるが、A東京も要所でライアン・ロシターや安藤周人がドライブからバスケット・カウントを決めて食い下がる。
3点ビハインドで迎えた第3クォーターの出だし、A東京はロシターの3ポイントシュートから8-0のランに成功し、一気に逆転する。だが、ここで琉球も今村佳太が長距離砲を入れ返すなどすぐに盛り返す。そして琉球は小野寺祥太がスティールから速攻を決めると、ヴィック・ローが躍動することで再逆転に成功した。
ともにシュート確率が上がらずに息詰まる戦いが続く中、琉球がリードを維持して第4クォーターは進んでいった。残り1分、A東京は小酒部泰暉が起死回生の4ポイントプレーを決め土壇場で追いつく。だが、琉球は直後のオフェンスで、アレン・ダーラムが冷静にこの試合で機能していたロシターとの1on1からフリースローを獲得し残り22秒でリードを奪った。そして最後まで集中力を切らさずに、このまま1点差で逃げ切った。
12得点を挙げた琉球の岸本はアウェーでの難敵相手の勝利をこう振り返る。「ゲーム1、ゲーム2に続いてディフェンスが鍵になりました。お互いにディフェンス、ルーズボールにプライドを持ったチームで、それを象徴するような試合でした。いろいろな要素があると思いまが、わずかなところで自分たちが勝利できてうれしいです」
過去2試合、琉球はともに前半で2桁のリードを許していたが、この日は岸本の活躍によって初めて前半でリードを奪った。これまでCSでの第3戦を何度も経験している岸本は特にこの試合では前半から先行することを重要視していた。だからこそ、自ら積極的にアタックを続けたと明かす。
「前半でビハインドは絶対にないようにと、なんとなく思っていました。第3戦、ギリギリのところで消耗しあっている中で追いかけるのは相当にキツイです。シュート一本の重みも全然、違います。前半に勢いを作るのは自分の役目だと思っていたので、とにかく積極的に行きました」
沖縄開催のセミファイナル「優先順位は、相手ではなくホームで戦えること」
琉球はレギュラーシーズン終盤に4連敗と明らかに調子を落としていた。特に課題となっていたのは、チームの持ち味である我慢強さが失われていたこと。その結果、接戦で自ら崩れて勝利を逃していた。しかし、今回のA東京戦は敗れた第2戦を含め、3試合連続で泥臭い身体を張ったプレーを続けた。
「我慢強さが戻った要因は何なのか?」というこちらの問いに対し、岸本はこう答えてくれた。「僕の個人的な感覚では、特にこの3試合では我慢というより、みんなが100%試合に集中していました。レギュラーシーズンはみんな自分のやりたいこと、求められていることのギャップとか、そういう葛藤があったと思います。でもCSはとにかく勝たないといけない。ミスが起こってもそれにとらわれていたら終わってしまいます。そういう意味でみんなが集中してプレーしてきた結果、我慢ができている感じになっていると思います」
そして昨シーズンの優勝を含め、大一番での経験豊富なチームらしく勝負の分かれ目をしっかりと認識できていたと続ける。「意図して我慢しているのではなくて、『ここをしっかり耐えないと』というのをみんなが言葉に出さなくても肌感覚で感じられていました。チームとして自信になる3試合だったと思います」
この劇的勝利で、琉球は6回連続のCSセミファイナル進出となった。戦力差が年々縮まっているBリーグにおいて、リーグ2年目からコロナ禍でのCS中止を除いて、毎年4強入りを果たしているのは偉業だ。
「今日、勝ったのは誇らしいです」と岸本は語り、4強入りはチームの進化をもたらしてくれると語る。「レギュラーシーズンではもどかしい時期があり、(地区7連覇を逃し)クォーターファイナルでホーム開催ができませんでした。その中で、A東京を相手にCSで勝てたことは意味があります。また、もう1つ壁を超えて次のステップに行くためのシリーズになったと思います」
取材対応の最後、岸本は千葉ジェッツが宇都宮ブレックスに勝ったことで、CSセミファイナルが沖縄開催となったことを知らされると「そうなんですね」と笑顔を見せた。今シーズンの琉球にとって千葉Jは天皇杯ファイナルで大敗し、そこからチームが負のスパイラルに陥るきっかけとなった相手だ。また、昨シーズンこそファイナルで勝利した相手だが、その前には2度CSセミファイナルで敗れるなど、多くのストーリーがあり、岸本も「自分たちにとって特別な相手です」と語る。
それでも岸本は「優先順位は相手ではなく、ホームで戦えること。そこはすごくうれしいです。優勝を目指す上では、どこと当たっても関係ないと思っているタイプです」と、沖縄で戦える意義を強調する。
宇都宮をアウェーで撃破した今の千葉Jは、天皇杯で敗れた時よりも勢いに乗っている。その難敵を倒すため、琉球にとって切り札となるのはホームコートアドバンテージだ。そして満員の沖縄アリーナの熱狂を最大限にして勝利をもぎとるためには、再び岸本のクラッチショットが欠かせない。