A千葉の爆発力を発揮させないようコントロール
B2 PLAYOFFS SEMIFINALSのアルティーリ千葉vs越谷アルファーズは、短期決戦の醍醐味とも呼ぶべき大アップセットとなった。レギュラーシーズンではA千葉が56勝4敗と無類の強さを見せたのに対し、越谷は35勝25敗。直接対決ではA千葉が5勝1敗と大きく上回っていた。
しかし、レギュラーシーズンでのA千葉の勝利は7点差、3点差、1点差、4点差、4点差とすべて接戦。勝ちに勝ちを重ねてB2を席巻したA千葉に対しても、越谷は臆するところがなかった。
豪華なタレントが揃い、どこからでも得点を奪うこともできて守備の穴もないA千葉に対抗するために、越谷がまずやったのは速い展開に持ち込ませないこと。高い位置から圧力を掛けるディフェンスをチームでかわし、アイザック・バッツと小寺 ハミルトンゲイリーの重量級センター2人も味方との良い距離感をキープして簡単には相手を走らせなかった。
こうしてA千葉の爆発力を発揮させないようコントロールしながら、第1戦では松山駿が3ポイントシュート7本中5本成功、フリースローも12本得て10本成功の33得点と大活躍。クロージングに問題があり延長に持ち込まれたものの、クラッチタイムの決定力ではB2屈指のタレントであるLJ・ピークがいる。延長残り10秒でピークが勝利を決定付けるディープスリーを沈めて、越谷が先勝した。
大事なところで得点力を発揮した松山駿
迎えた第2戦、試合序盤はA千葉が越谷の対策を上回る。ピークにパスを入れさせない守備でリズムをつかませず、ターンオーバーを誘発しては第1戦では出せなかった速攻を連続で繰り出し、12-3といきなりのラン。ただ、越谷は悪い流れを引きずらなかった。チームが完全に浮足立つ前に選手を入れ替え、井上宗一郎に笹倉怜寿、バッツとベンチから出た選手が期待に応えることでチームが立ち直った。その後は時間の経過とともに第1戦と同じようにA千葉の持ち味を封じ込み、第2クォーター終盤に逆転に成功した。
A千葉はトランジションを封じられても、どこからでも点の取れるバランスの良さで越谷のディフェンスをこじ開けようとするが、エースのブランドン・アシュリーに続く得点源であるアレックス・デイビスとデレク・パードンがファウルトラブルに陥ったことで、その持ち味も発揮できない。前田怜緒がいつも以上に積極性を出して攻めるも、オフェンス爆発には至らない。第2クォーターは14得点、第3クォーターは16得点とA千葉らしいオフェンスは影を潜めた。
ただ、越谷もA千葉を突き放すには至らない。こうしてロースコアの我慢勝負のまま試合は終盤へ。前日の33得点からこの試合では9得点となった松山が、それでも大事なところで3Pシュートを決めて残り2分半で越谷が逆転。A千葉も杉本慶のアシストからゴール下に飛び込む前田の得点で再び逆転と両者一歩も譲らない。
それでも、このクラッチタイムに再びピークがクラッチプレーヤーとしての真価を発揮する。一度はインサイドのジャスティン・ハーパーにボールを預けてポストから攻める形を作ってダブルチームを引き寄せ、ズレを作ったところでパスを受けたピークがスピードに乗ったドライブでA千葉のディフェンスをこじ開け、逆転のレイアップを沈めた。
LJ・ピークがクラッチプレーヤーの本領発揮
これで残り16秒、越谷が71-70とリード。A千葉は追い詰められたが、最後の攻めを5人でクリエイトし、杉本のアタックは止められたもののオフェンスリバウンドを奪ったパードンがファウルを受けて、値千金のフリースロー2本を獲得する。ただ、このプレッシャーのかかる場面でパードンは苦手のフリースローを2本とも落としてしまい、同点さらには逆転のチャンスを逸した。
最後のファウルゲームを乗り切った越谷が75-72で勝利し、2連勝でB1昇格を決めた。安齋竜三ヘッドコーチは「最後のほう、プレーオフに入る前に上位チームのA千葉さん、滋賀さんとやった時ぐらいからチームとしてまとまってきて、カルチャーも少しずつできていたことを感じていました。それが本当に出せたゲームだと思います」と語る。
タレント力ではA千葉が上だっただろうが、昇格を懸けた大勝負で攻守の遂行力の高さ、チーム一丸の戦いができた理由を、安齋ヘッドコーチは「自分の方向にベクトルが向くのではなく『チームがどうなりたいか』に向いてやりだしたところ」と語る。「自己犠牲を払いながら、それを周りが評価できるチームにだんだんなっていった。それがこの結果を生んだという感じがしています」
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