「まずはチームとして、今シーズン一番というくらい我慢強く戦えた」
5月10日、琉球ゴールデンキングスはチャンピオンシップ(CS)のクォーターファイナル初戦でアルバルク東京と対戦。ダブルオーバータイムまでもつれる激闘となったが、岸本隆一の劇的な3ポイントシュートによって土壇場で勝ち越し81-80で制した。
試合の立ち上がり、琉球はジャック・クーリーのゴール下で得点を重ねていくが、A東京のガード陣に確率良くアウトサイドシュートを決められ互角のスタートとなる。しかし、第2クォーターに入ると、琉球はボールムーブが停滞しオフェンスでは単発のインサイドアタックでタフショットを打っては外れる悪循環に陥る。また、守備ではオフェンスリバウンドを取られてのセカンドチャンスを許し、ツーメンゲームに対処できずに前半で14点のビハインドを負ってしまう。
それでも後半に入ると、桶谷大ヘッドコーチが「彼らの責任感だと思います。自分たちでアドバンテージを取らないといけない、その気持ちがすごく見えました」と振り返る、今村佳太や岸本による積極的なドライブからのキックアウトによって、攻撃に流動性が生まれた。守備でもうまくアジャストしてA東京のインサイドアタックを封じ、第3クォーターに20-10のビッグクォーターを作り、互角の展開に持ち込んだ。
その後は両チームともに堅守で譲らない展開となる。また、両チームともに勝負どころのフリースローを決めきれないこともあって、試合はダブルオーバータイムへ突入した。先手を取ったA東京は残り1分にセバスチャン・サイズの得点で3点をリードしたが、琉球は2点を追う残り9秒に岸本が3ポイントシュートラインの数メートル後方からのディープスリーを決めて逆転に成功。そしてラストポゼッションを守りきって大きな一勝を挙げた。
決勝弾を沈めた岸本とともに、琉球の勝利に欠かせない活躍を見せたのが今村だった。17得点6アシスト4リバウンドを記録したが、第4クォーター終盤にファウルアウトを喫し、フィールドゴール成功率も19本中7本成功と決して高くはなかった。それでも、後半に入って琉球のオフェンスが機能したのは、今村の積極的なドライブからの崩しがあったからだった。
今村はこのように試合を振り返る。「まずはチームとして、今シーズン一番というくらい我慢強く戦えたことは、ここからチャンピオンシップを戦っていく上ですごく良い糧になったと思います。修正すべき点もありますが、何よりもチーム全体としてこの試合に集中する力がすごく強かったのは良かったところです。個人的には、シュートの確率は悪かったですが、うまくキックアウトだったりズレを作ったりすることで、アルバルク東京さんが嫌がることを続けられたかと思います」
「土壇場でそれぞれがより信頼してプレーできたのが、結果として現れました」
琉球はレギュラシーズン終盤に痛恨の4連敗と大きく失速。その結果、名古屋ダイヤモンドドルフィンズに西地区王者のタイトルを最後にさらわれ、地区7連覇を逃してしまった。チームの一番の問題となっていたのは、今村も言及したようにここ一番で我慢しきれないことだった。特にオフェンス面は、この試合の前半にもあったように、流れが悪くなると外国籍選手のドライブによる強引なシュートという個の単発なオフェンスに陥る悪癖が続いていた。
だが後半はその悪い流れを今村がハンドラーになることで断ち切った。チームが下降線を辿っている間、琉球のハンドラー役はヴィック・ロー、アレン・ダーラムが務める場面が増え、今村は過去2シーズンと比べて明らかにボールタッチが減っていた。しかし、CSの大事な初戦のビハインドを負った崖っぷちの状況で、今村はエースとしての強い覚悟を見せた。
「2人を信頼はしていますが、こういう大事な場面では自分が責任を持ってプレーしたい。ここは自分がやるべきというのは、自分が一番よくわかっています。(レギュラーシーズン終盤に)自分がプレーに絡んでいないのは悔しい気持ちがありました。是が非でも自分がプレーをクリエイトしたいという気持ちがCSに出ました。それが良い結果に繋がったと思いますし、明日もそういう気持ちでやっていきたいと思います」
また、無念のファウルアウトによって、ベンチで祈ることしかできなかったオーバータイムの心境をこう明かす。「自分がコートにいれないのは、不甲斐なかったですし、悔しかったです。ただ、チームメートをずっと信頼していました。特にロー選手にはずっと『信じてるから』と声がけをしていました。それに応えてくれたチームメートに感謝したいです」
レギュラーシーズン終盤の琉球は、各選手の責任感、チームファーストの献身性がうまく噛み合わず、その結果ストレスがたまり我慢強さが徐々に失われていった。ただ、CSに向けて、そういった負の感情をリセットし、文字通りチーム一丸となれたことについて今村は語る。「今シーズン、全員が気持ちよく送れたシーズンではなく、それぞれが悔しい気持ちを持っていました。その思いを一回置いて、自分たちが優勝する気持ちで臨んだことが今日のすべてです。土壇場でそれぞれがより信頼してプレーできたのが、結果として現れました」
そして今村個人としても、ようやく「今更といえば今更ですが、このタイミングで自分がこういうプレーをすればチームがうまくいくと見えてきた収穫がありました」と大きな手応えを得ている。
今日の第2戦、ダブルオーバータイムの激闘により両チームの中心選手たちは昨日の疲労から完全にリカバリーするのは難しいだろう。そんな中、結果的に今村はファウルアウトによって31分30秒とプレータイムが抑えられた。いつもと同じコンディションの大黒柱が、違いを生み出すことで琉球は連勝を狙っていく。
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