地元の期待とエネルギーを集めて、 震災のダメージに立ち向かう熊本ヴォルターズの『今』

2017/02/17
Bリーグ&国内
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文=大島和人 写真=B.LEAGUE

予想外の雪に見舞われつつ、熊本県南部の人吉へ

B1の18チームは日本の東側に偏っていて、大阪より西にあるチームは琉球ゴールデンキングスしかない。しかしB2に限ると、中四国と九州の6チームで争われる西地区が熱い。第17節を終えた時点で島根スサノオマジック、広島ドラゴンフライズ、熊本ヴォルターズの『3強』が1ゲーム差にひしめく大混戦だ。

その中でも熊本は、昨年4月に震災があったにもかかわらず、立派に復活してB1昇格を狙える戦いを見せている。交流戦に入ってからはやや苦しんでいるが、現況をこの目で確かめたかった。

第18節はメインアリーナの熊本県立総合体育館でなく人吉開催。人吉は宮崎、鹿児島の2県に接する熊本県南部の小都市だ。本来は熊本市内を少し見てから向かう予定だったが、2月10日の晩から九州全域が雪に見舞われ、交通機関の運休や遅延が相次ぎ、乗車予定だった熊本行きの高速バスは満席に。ルートの変更を強いられることになった。日本海側でなく九州で雪の余波を受けるとは……。

新八代駅前のホテルに荷物を預けてから人吉に向かったのだが、宿はちょうど破損した外壁タイルの修復工事中だった。震災から10カ月が経ち、八代市は被害の大きかった熊本市や益城町から40キロほど離れている。しかし影響は残っていた。

試合会場となった人吉スポーツパレスは駅から徒歩20分ほど。ちなみに土足禁止だった。県立総合体育館は土足可とのことだが、日本は土足禁止の公共施設が多く、B2を見に行くならそこはあらかじめ調べておいた方がいい。B1のホームアリーナばかり回っていたので、『足元』が疎かになっていた。

寄せ書きをしていると思ったら、3月11日の福島ファイヤーボンズ戦に向けたものだった。東日本大震災からちょうど6年という日に、熊本県立総合体育館で被災地同士のカードが組まれている。

熊本のヒーロー『くまモン』が試合前のフリースロー始球式に登場した。あの丸い体格でなかなか筋が良く、外しはしたもののリングを叩く惜しいシュートだった。今季の成功率は「9分の1」らしい。

東京EX相手に痛い一敗、西地区首位争いから一歩後退

11日は熊本が東京エクセレンスに快勝している。前半にはケガ明けの神原裕司の活躍などから速攻がハマり、43-25と大差をつけた。また試合を通してレジー・ウォーレン、中西良太のビッグマンがインサイドを支配し、リバウンドは合計55個と圧巻だった。第4クォーターに追い上げられたが、最終的には82-65と危なげなく勝利した。

熊本にとっては人吉での初勝利。小林慎太郎キャプテンは「ホームだけど人吉は3年ぶりということで、お客さんもワクワクしている部分を感じられた。天候も悪い中で、お客さんの期待に応えられて良かった。すごく気合が入っていて楽しめた」と顔をほころばせた。

しかし12日の再戦は逆の展開になる。東京EXはポイントガード西山達哉が26得点と大活躍。熊本は後半に71失点と流れに呑まれ、最終スコア89-109で敗れた。

記者会見場は4畳半ほどの狭いスペース。そこに2台のカメラと、10人ほどの記者がひしめき合っていた。熊本のヘッドコーチと選手がなかなか記者会見場に出てこない。しばらくしてスタッフから「ミーティングをしている」という報告が入った。

試合が終わって50分ほど経ってから、「お待たせしました」の言葉とともに保田尭之ヘッドコーチが登場する。27歳の青年指揮官は、この敗戦で一歩後退した西地区の首位争いについてこう話した。

「選手たちの意見を反映させながらやっていくのが僕のスタンス。僕が若いからどうこうということでなく、いつになってもこのスタンスは変わらない。(島根や広島との)直接対決も残っているので、しっかりそこまで耐えていきたい。西地区に戻って直接対決で力を発揮できるように頑張っていきたい」

キャプテンの小林は、試合後の長いミーティングについて「本当にあり得ない、許されない負けでした。チームの問題点や互いに思っていることを話し合いました」と明かす。

「僕らが今までなぜ勝てていたのか、どうやって勝ってきたのか、それをもう一回思い出したい。どう自分たちがプレーをしていくか、どういう内容をお互いにやっていくのか、そういうことにフォーカスして、そこに努力していくこと。今日の試合なら審判の笛とか、チームで上手くいかない部分に反応しすぎて、僕たちのやるべきことに集中し切れていなかった。それが今のチーム状況に陥っている原因ではないか? と僕が声掛けをしました」

熊本は第18節を終えて28勝8敗となり、30勝6敗で並ぶ島根と広島を追っている。B2は昨年12月からインターリーグ(交流戦)に入ったが、熊本はそこから11勝5敗とやや減速した。そんな危機意識があったからこその長時間ミーティングであり、キャプテンの言葉だったのだろう。

小林は快勝した11日の試合後も同じく「広島だろうが、島根だろうが、相手に関係なく自分たちのやることを遂行しよう。勝てるか負けるかは分からないですけど、自分たちのやるべきことをやって、そうしたら良いパフォーマンスが出せる」と述べていた。バスケットは流れのスポーツだが、流れは追うものでなく、自らにフォーカスすることで自然と手に入るものだ。

立ち上がるためのパワーをここに『充電』しに来ている

東京EXとの連戦を終えて、リーグ戦は残り24試合。もちろん自分たちの戦いを取り戻すことは必要だが、28勝8敗は悪くない成績だし、追撃の時間は十分にある。何より、熊本にはB2最多の観客数という後押しがある。小林もそんな期待を強く感じていると語る。

「昨シーズンと比べて、やっぱり地震後の期待感はすごく感じています。街を歩いていても『ヴォルターズのキャプテンですよね。頑張ってください。いつも応援しています』みたいな声はかなり増えました。なぜなら今は勝っているから。これが注目されている一番の要因なのかなと思います」

熊本出身の小林にとっては、郷土への思いもある。

「熊本はサッカーとバスケットの2つしかプロがないのですが、ウチが勝つということが大きなエネルギーを生み出しているのは肌で感じています。期待感やエネルギーが復興に直結するのかどうか、それは目では見えないけれど、僕はそれを信じて、スポーツの力を信じてやっています。期待感を、エネルギーを、勝利につなげてもらっている。お客さんの数はB2で1位。あれだけ大変なことがあったけど、みんな立ち上がるためのパワーをここに『充電』しに来ていると思います」

もちろん勝負ごとだから運不運はある。12日の試合のような悔しさを味わうこともある。しかし、そんな過程をみんなが共有し、刺激を与えあうこと自体が、きっと大きなエネルギーを産む。小林キャプテンのいう『充電』は、いい言葉だと思った。

自分も微力ながら熊本の復興を助けたいという気持ちはあったのだが、小林の話を聞いて逆に自分が後押しされたような気持ちになった。Bリーグの価値を知り、今後の取材に向けてエネルギーを『充電』できた人吉での2日間だった。